新構造のグラフェン、優れた導電性・耐食性示す:まるでスポンジのよう、ナノ細孔が柔軟に変形(2/2 ページ)
東北大学の西原洋知准教授らによる研究グループは、導電性と耐食性に優れた大表面積スポンジ状グラフェンの開発に成功した。この材料を電気二重層キャパシターの電極に適用したところ、従来に比べて最低2倍のエネルギー密度を達成した。
電気二重層キャパシターの電極材料として応用
研究グループは、開発したGMSを電気二重層キャパシター(EDLC)の電極材料として応用した。EDLCのエネルギー密度(E)は、「E=(1/2)CV2」で求めることができる。Cは静電容量で、VはEDLCの作動電圧である。一般的に、EDLCの電極には活性炭が用いられている。比表面積が大きく、静電容量を大きくできるためだ。ところが、グラフェンの端を大量に含んでいるため、劣化しやすいという短所がある。このため、作動電圧は最大2.8Vにとどまっていた。
これに対してGMSは、高い比表面積を有しながら、グラフェンの端がないため、大きな静電容量で作動電圧を約4Vまで高めることができるという。この結果、従来に比べて約2倍のエネルギー密度を達成した。また、固体高分子形燃料電池のPt(プラチナ)担体として、従来材料のカーボンブラックより長寿命化が可能になる。このため、燃料電池自動車への応用が期待できるとみている。
GMSは、グラフェンと同様に柔軟性と強靭な引張強度を兼ね備えている。外力によってスポンジのように弾性変形する。その細孔サイズは、可逆的で0.7nm以下まで変形させることができるという。スポンジのように、外力によってナノサイズの細孔内部に取り入れる物質の量を調節することが可能である。このため、新たなエネルギー変換材料デバイスとしての応用が期待されている。
なお、研究成果は2016年7月14日(ドイツ時間)に、「Advanced Functional Materials」誌でオンライン公開された。
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