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ソフトバンク史上最大の賭けに出た孫氏の思惑ARM買収は“必然”だった?(3/4 ページ)

なぜ、ソフトバンクはARMを買収したのか? 狙いはどこにあるのか? いろいろな見方が広がっている中で、いま一度、ソフトバンクが行ってきた大きな投資を振り返りながら、ARM買収の意味を考えた。

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IoTの共通基盤を構築できるのは誰か?

 次に、ハードウェア、ソフトウェアのレイヤーだ。このレイヤーは、パラダイムシフトの潮流を生み出せることのできるプラットフォームのレイヤーだ。底辺から頂点へとピラミッドを上がってきたソフトバンクが狙っているであろう領域だ。

 最もIoTのプラットフォームとして君臨できそうな位置にいるのは、モバイルインターネットで2大プラットフォームの1つを形成したGoogleだろう。Androidはスマートフォン以外にもさまざまな組み込み機器でも使用されており、Appleよりも相当、IoTのプラットフォームに近い位置にいるはずだ。

 臆測だが孫氏もきっと、Googleを取り込みたいはずだろう。だからといって、ソフトバンクがGoogleを買収することはありえない。また、モバイルインターネットで連携したAppleと違って、Googleは既に巨大であり、たとえ連携しても、世界に何社も存在するキャリアの1社にすぎないソフトバンクがGoogleと“共に潮流を生む”という水準までには至らないだろう。そして何より、GoogleがIoTのプラットフォームを牛耳るという確証もない。未知の伏兵が現れる可能性も十分ありうる。

ARMがIoTでも残る理由を考える

 そこで、確実に、そして、買収や密な連携が可能な“IoTで勝ち残る企業”を探すと、ARMの存在が浮上していくわけだ。ARMがピラミッドで位置するところは、一応、「1.ハードウェア」だろう。ただし、そのハードウェアのレイヤーの中でもより、上の頂点の“点”ぐらいの位置にすぎないのだが……。

 ARMがIoTでも勝ち残ると断言できる理由は、ARMの他に選択肢がないからだ。確かに、ARMが手掛けるCPUコアは、かつては多くの半導体メーカーが自ら設計して作っていたものであり、ARM以外でも設計できる。にもかかわらず、ARM以外に選択肢がないと言い切れるのは、“CPUコアでもうけることができるのはARMだけ”だからだ。


ARMの売上高推移 (クリックで拡大) 出典:ソフトバンクグループ

 ARMの売上高は2000億円にも満たない。世界のスマートフォンのほぼ100%に搭載され、携帯型ゲーム機や家電などにも入り込み、年間150億個近いARMのCPUコア搭載デバイスが出荷されているにもかかわらずだ。PCインターネット世界のCPUの覇者Intelが5兆円程度の売上高を上げているのに、スマートフォン世界のCPUの覇者として、もてはやされているARMの売上高は、その20分の1以下だ。その理由は乱暴に言ってしまえば、その程度しか市場規模がないからだ。

 しかし、その市場規模の小ささがARMが“IoTでも勝ち残れる”と断言できる根拠になる。CPUの設計に掛かる費用は、誰が設計しても似たような規模になる。半導体メーカー1社がCPUコアを自社開発しようとするならば、ARMと同じだけの設計コストが必要になるわけだ。だが、そのCPUコアの設計という行為から得られるリターンは、圧倒的なシェアを誇るARMの足元にも及ばないことになる。仮に、ARMを駆逐できたとしても、CPU設計の対価として手にできるお金は最大でも2000億円にすぎない。これでは、誰もARMに戦いを挑もうとは思わないだろう。

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