TI、合併という“起爆剤”がなくても安定:半導体業界がM&Aに揺れる中
半導体業界において大型買収の波が止まらない中、Texas Instruments(TI)は、M&Aという“起爆剤”がなくても安定した業績を維持している。
合併という“起爆剤”がなくても安定
半導体ベンダーのTexas Instruments(TI)は、2016年7月25日(米国時間)に同年第2四半期の売上高と利益を発表したが、その内容はウォール街の予測に沿うものだったようだ。
過去2年にわたり、多くの半導体ベンダーが大規模なM&Aを行うことで勢いをつけてきた。だが、マクロ経済環境が全般的に鈍化する中、TIは、合併という“起爆剤”がなくても引き続き安定した業績を維持している。
2016年第2四半期の業績発表後に行ったアナリストとのカンファレンスコールの中で、TIの最高財務責任者(CFO)であるKevin March氏は、TIがM&Aに関して顧客から圧力を受けたことはないと述べた。2013年後半以降、前例のないM&Aの嵐が半導体業界に巻き起こっている。
March氏は「当社が合併に関して顧客と話した唯一の例が、2011年に当社がNational Semiconductorを買収した時だ。当時、多くの顧客がこのM&Aを喜んでくれた。買収が、顧客にとって不利なものではないと分かっていたからだ。それ以降、M&Aについて顧客がわれわれに意見を寄せてきたことはない」と述べた。
TIは2011年にNational Semiconductorを約65億米ドルで買収したが、一部のアナリストは、それが、その後数年にわたって繰り広げられるM&Aの波の皮切りとなる出来事だったと考えている。買収合併の嵐は、過去30カ月でさらに激しさを増した。
利益は前年同期比12%増
TIは、2016年第2四半期の売上高が前年同期比1%増となる32億7000万米ドルだったと発表した。利益は7億7900万米ドルで、前年同期から12%増加した。
TIの決算結果は、大半のアナリストの予測に沿うものである。Yahoo! Financeによると、アナリストらは売上高を約32億米ドル、1株当たりの利益を約73セントと試算していた。
March氏は「当社の2016年第2四半期の決算結果は、われわれのビジネスモデルの強さを示すものだと確信している」と述べた。
アナログ製品全体の2016年第2四半期における売上高は、前年同期とほぼ同じ20億4000万米ドルに達したようだ。また、2016年第2四半期の組み込みプロセッサ製品全体(マイコンを含む)の売上高は7億5500万米ドルで、同年前期比から約9%増加した。
組み込みプロセッサ部門の営業利益は前年同期比40%増の1億8900万米ドルだった。
TIは現在の四半期の売上高について、33億4000万米ドルから36億2000万米ドルになると見込んでいる。
【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】
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