日本電産、Emersonのモーター事業などを買収:「Vision2020」達成に向けて成長を加速
日本電産が、米国Emerson Electricからモーター・ドライブ事業と発電機事業を買収する。買収金額は12億米ドル(約1200億円)で、買収完了は2016年度第3四半期(10〜12月)の予定だ。
製品力と提案力を強化、全世界に地域拡大
日本電産は2016年8月2日、米国Emerson Electricからモーター・ドライブ事業と発電機事業を取得することで合意、資産株式売買契約を結んだと発表した。買収金額は12億米ドル(約1200億円)、2016年度第3四半期(10〜12月)には買収を完了させる予定である。
日本電産は、産業用や商業用事業を重点分野の1つと位置付け、戦略的に事業の成長/強化策を打ち出してきた。2010年10月にはEmersonより、モーター・コントロール事業(現在は日本電産モータ)を買収した。さらに、2012年6月には大型産業用モーターやドライブ装置、発電機メーカーのAvtron Industrial Automation(2016年3月に日本電産モータが吸収合併)および商業用モーターメーカーのKinetek Group(同)をそれぞれ買収し、全世界における事業基盤の確立と、製品群の拡充を図ってきた。
新たにEmersonから買収することになった事業は、フランスに本社を置くLeroy-Somer(LS)やイギリスに本社を置くControl Techniques(CT)などが手掛けているモーター・ドライブ事業と発電機事業である。2015年9月期におけるこれら事業の売上高は16億7400万米ドルとなっている。
買収の狙いとして日本電産は、産業用製品のフルライン化と地域拡大、ドライブ技術とモーター製品の組み合わせによる提案力強化などを挙げる。一例として、米国NEMA規格対応の産業用モーター市場で強みを持つ日本電産に対して、Emersonグループは低圧IEC規格のモーターを得意としていることを挙げた。
また、10MW以上の中圧発電機に強みを持つ日本電産に対して、Emersonグループは10MW以下の低圧、中圧発電機市場で高いシェアとブランド力を持つという。製品ラインアップやカバーする市場が異なり、事業統合により競争力が一段と高まるとみている。
日本電産では、新たにEmersonのモーター・ドライブ事業と発電機事業を買収することで、重点事業とする産業用や商業用の事業領域において、製品ポートフォリオと対象顧客を一気に拡大することが可能となった。同社は2020年度に売上高2兆円を目標とする新中期戦略「Vision2020」を全社ベースで展開している。今回の買収による効果も目標達成を後押ししていくことになろう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 日本電産、中国企業のSRモータドライブ事業取得
日本電産は2015年8月、子会社のNidec Motor (Qingdao) Corporationが2015年7月31日付で、中国企業のSRモータドライブ事業を取得したと発表した。 - 衝撃の「ADIのリニア買収」背景と今後
日本時間2016年7月27日の朝、国内半導体業界にも衝撃が走った。営業利益率4割を超える超優良半導体メーカーLinear Technology(リニアテクノロジー)が、Analog Devices(ADI、アナログ・デバイセズ)に買収されることで合意したという。業界関係者は「まさかリニアが!」と驚くとともに、「なぜ、リニアが?」と首をひねった――。 - STマイクロ、amsのNFC/RFIDリーダー事業を買収
STMicroelectronics(STマイクロエレクトロニクス)が、オーストリアamsのNFCおよびRFIDリーダー事業を買収した。STマイクロエレクトロニクスは、同社のセキュアエレメントとamsのNFCコントローラーを搭載したデバイスのサンプル出荷を既に開始している。 - Infineonによる“CreeのSiC事業買収”の狙い
Infineon Technologiesは2016年7月21日、このほど発表したCreeのSiCウエハー/デバイス事業に関する説明を行い、SiCデバイスとともに、SiCウエハーの外販を強化していく方針を明らかにした。 - ルネサス、誰でもモーター制御できる仕組みを公開へ
ルネサス エレクトロニクスは2014年11月、個人レベルでは作りづらいモーター制御システムを簡単に制作できるようにすることを目指した開発プロジェクトを立ち上げたと発表した。既に同プロジェクトで、C言語プログラムを記述するスキルがあれば、本格的なモーター制御が行えるというシステムを構築し、将来的には同システムに関する情報を広く公開していく方針だという。 - ブラシレスDCモーターの利点と課題解決例
ブラシレスDC(BLDC)モーターは、その技術的優位性と高効率性により、多くの既存アプリケーションにおいてブラシ付きモーターに置き換わりつつある。BLDCモーターの利点を紹介するとともに、制御が複雑なBLDCモーターへの移行課題を解決する1つの例を紹介する。