Intel、機械学習を手掛けるNervanaを買収へ:NVIDIAに挑む
Intelが、ディープラーニング向けASICやソフトウェアを手掛けるNervana Systemsを買収する。これにより、ディープラーニング向けGPU市場をけん引するNVIDIAに挑む考えだ。
Nervanaを買収
Intelは2016年8月16〜18日まで米国カリフォルニア州サンフランシスコで開催される「Intel Developer Forum(IDF 2016)」で、Nervana Systems(以下、Nervana)を買収する意向を発表する予定だ。Nervanaは、ディープラーニング向けASICやソフトウェアを手掛ける。Intelはこの買収により、ディープラーニング向けのGPU(Graphics Processing Unit)に取って代わることを狙う。
Intelが高性能コンピューティング(HPC)市場で強みを持つ一方で、NVIDIAは、その高度なGPUでディープラーニング市場での存在感を強めている。だが、NVIDIAの統合開発環境「CUDA」は、Nervanaのクラウドサービス「Neon」の台頭によって売り上げを大幅に減らしている(NeonはCUDAと互換性がある)。
IntelがNervanaを買収したい理由は、Nervanaが2017年までに発売する予定のディープラーニング向けアクセラレーターチップに将来性を見いだしているからだ。
このアクセラレーターチップが宣伝通りに動作するのであれば、Intelは近い将来、ディープラーニング用アクセラレーターのハードウェアボードを展開し、NVIDIAのGPUボードに打ち勝てる可能性がある。さらには、買収によってIntelの傘下となるNeonクラウドサービスが、NVIDIAのCUDAをしのぐことすらあり得るかもしれない。
IntelのData Center Groupでエグゼクティブバイスプレジデント兼ゼネラルマネジャーを務めるDiane Bryant氏(左)と、Nervanaの共同創設者Naveen Rao氏。Nervanaのエンジニアと幹部は、Bryant氏が率いるData Center Groupに移行する予定だ
Moor Insights & StrategyのディープラーニングおよびHPC部門でシニアアナリストを務めるKarl Freund氏は、EE Timesに対し、「IntelがNVIDIAに打ち勝つのは簡単なことではない。だが、急速に成長している市場では、あり得ることだ。ディープラーニングやニューラルネットワークの訓練にGPUを使うのは簡単ではなく、NVIDIAはその分野をリードしている。Intelにはプロセッサ「Xeon Phi」があり、Alteraの買収でFPGAも獲得したが、GPUは展開していない。Nervanaの買収は、ニューラルネットワーク専用に設計されたコプロセッサを提供することで、ディープラーニング市場に参入するための道筋となる。
Nervanaの新ASIC
Nervanaの「Engine」は、マルチチップモジュールのASICで、数テラバイトの独自3次元(3D)メモリを搭載している。同社はこのメモリを「HBM(High Bandwidth Memory)」と呼んでいる。Freund氏によれば、このHBMによって、Engineは、高性能ながら、競合他社の汎用GPUに比べて小型化を実現できたという。
Freund氏は、「Nervanaはまだベンチマークを発表しておらず、チップの発売も2017年になる予定だが、Engineでアルゴリズムを処理した場合、同じアルゴリズムを汎用GPUで処理する場合に比べて速くなるとみられる」と語った。
【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- ディープラーニングの学習で「世界最高速度」実現
富士通研究所は2016年8月9日、スーパーコンピュータのソフトウェア並列化技術を応用し、複数のGPUを用いてディープラーニングの学習速度を高速化するソフトウェア技術を開発したと発表した。 - 働く人はAIで幸せになれる? 体験者に聞いてきた
日立製作所は2016年6月、AI技術を活用し、働く人々の幸福感向上に有効なアドバイスを、各個人のデータから自動で作製する技術を開発し、日立グループの営業部門に所属する約600人に対して、実証実験を開始したと発表した。今回、実証実験に参加した2人にインタビューを行った。 - Intel、モバイル向けSoC事業を廃止
2016年4月に最大で1万2000人を削減する計画を発表したIntel。それに伴い、モバイル機器向けSoC(System on Chip)の「Atom」シリーズを終了する。 - 人間の脳が握る、デバイス低消費電力化の鍵
ウェアラブル機器に欠かせない要件の1つに、低消費電力がある。「第2回 ウェアラブルEXPO」のセミナーに登壇した日本IBMは、超低消費電力のコンピュータとして、人間の”脳”を挙げ、IBMが開発中の「超低消費電力脳型デバイス」について語った。 - NEC「予測の根拠を説明できる人工知能」を強化
NECは2016年5月26日、大規模なデータから多数の規則性を発見しさまざまな事象の予測/処方分析が行える独自の人工知能技術「異種混合学習技術」を、分散処理に対応させたと発表した。従来よりも規模の大きなデータを高速に扱えるようになり同技術の応用範囲が広がるという。 - “アポロ11号陰謀説”を覆す! NVIDIAが最新GPUアーキテクチャで証明
NVIDIAのエンジニアチームが、最新GPUアーキテクチャ「Maxwell」を使い、「アポロ11号」が本当に月面に着陸していたことを、あらためて証明した。