ソフトバンク、Massive MIMOの商用サービス開始へ:2020年に向け「5G Project」
ソフトバンクとWireless City Planningは、2016年9月16日から「Massive MIMO」の商用サービスを「世界で初めて」提供すると発表した。全国43都市100局で開始し、順次拡大していく。
混雑時でも高速通信を可能に
ソフトバンクとWireless City Planningは、第5世代移動通信(5G)システムの導入に向けて、「5G Project」を開始すると発表した。同プロジェクトの第1弾として、2016年9月16日から「Massive MIMO」サービスを「世界で初めて」提供する。
同社によると、モバイルデータ通信量はこの10年間で2300倍と爆発的に増加しており、今後も増加すると予測されている。そのため、ネットワークをより強化する必要がある。しかし、基地局は超過密状態で、都市部に基地局の数を増やすのは困難である。
そこで、これからのネットワーク強化として同社が掲げるのが、「1基地局当たりの容量を増やすこと」、Massive MIMOの導入である。Massive MIMOの特長は、ネットワーク容量がTD-LTE基地局(AXGP)と比較して最大10倍。アンテナ数は、TD-LTE基地局が4本または8本なのに対して、Massive MIMOは最大128本であることだ。
また、電波の放射エリアを特定方向へ集中させる「ビームフォーミング」技術と組み合わせることで、混雑時でも高速通信を実現できるという。ソフトバンクのモバイル技術本部ネットワーク企画統括部で統括部長を務める北原秀文氏は、同社のWebサイト上で「Massive MIMOの登場によって、今まで1階だけの平屋だった空間を、マンションのように複数階の空間にすることができる。つまり、平屋で何人かでシェアしていたネットワークが、一人一人に個別の部屋が割り当てられるイメージになる」と述べている。
全国43都市100局で開始
同社が都内4カ所、試験端末15台で行ったMassive MIMOの実行速度調査では、平均6.7倍の高速化を実現。浅草では約6倍、新橋で約7倍、飯田橋で約5倍、新宿で約9倍高速になったとする。さらに、100人が同時に1Mバイトのファイルをダウンロードする実証実験を行ったところ、100人全員が10秒間でダウンロードに成功したという*)。
*)立川市制50周年記念 憩いの場で、ソフトバンクがモニタス立ち会いのもと計測(9月2日 14:00〜16:00)
Massive MIMOサービスは、ソフトバンクの「SoftBank 4G」とワイモバイルの4G(AXGP)対応端末が対象となる。まずは全国43都市100局で開始し、順次拡大していくとした。
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