半導体業界、次なる買収ターゲットは?:M&Aの嵐が収まる気配はなく(2/5 ページ)
半導体業界におけるM&Aの嵐は収まる気配がない。2016年も、2015年ほどの数ではないものの、大規模な買収が相次いでいる。では、現時点で買収のターゲットとなりそうな“残っている企業”はどこなのだろうか。
今後、統合が進むと予測される分野は?
PwCのMehrotra氏とFisher氏は、簡潔に、「アナログ/ミックスドシグナル技術」と「サーバ/データセンター市場」の2つの分野を挙げている。
両氏は、「アナログ/ミックスドシグナル技術は、IoT(モノのインターネット)市場で成功を収める上での鍵となる。同市場では、現実世界の信号を正確に測定、モニタリングできる技術の他、特に電池駆動のデバイスの電力消費量を効率的に管理するための技術が不可欠だからだ」と述べる。
また両氏は、「より細分化された一部の分野では、合併買収に向けた準備が整っている。こうした分野ではこれまで、合併買収活動が比較的少なかった」と付け加えた。
IoTは、非常に幅広い分野を網羅しているため、さまざまな技術分野をターゲットとした合併買収が行われることになるだろう。
米国の市場調査会社であるSemico Researchの社長を務めるJim Feldhan氏は、EE Timesのインタビューに応じ、「メーカーが、IoTへの対応準備として自社の製品シリーズを完成させるためには、コネクティビティ/無線、マシンビジョン、パワーマネジメント、センサー、MEMS、セキュリティ、マイコンなどに関連するアナログ技術が必要だ」と指摘する。
さらに同氏は、「MEMSやセンサー市場は、今後も変化し続けるだろう。2015年に合併買収が相次いだのは、多くのメーカーが、自社の技術をセンサーフュージョン向けに対応できるようにしたかったからだ」と付け加えた。
市場調査会社であるIHS Markitでパワー半導体担当シニアアナリストを務めるJonathan Liao氏も、Feldhan氏のこの見解に同意する。Liao氏は、「IoTは、電球から貨物船に至るまで、インターネットに接続可能なあらゆるモノを対象とする。このため、IoTを目指す企業は、さらなる多様化の実現を目指し、合併買収戦略においてターゲットを細かく絞り込んでいく必要があるだろう」と述べる。
さらに、合併買収活動に向けて機が熟したとされるもう1つの市場が、サーバ/データセンター市場だ。
PwCのコンサルタントたちは、「サーバ/データセンター市場では現在、プロセッサメーカー各社が競争を繰り広げていることから、合併買収の新たなフィールドになるとみられる」とみている。「プロセッサメーカーは通常、自社のプロセッサ製品を補完するために、プログラム可能なハードウェアアクセラレーションを入手しようと、FPGA技術の獲得に必死だ。特に、ARMサーバ市場では、現在まだ初期の段階ながら競争が激化していることから、こうした中での足掛かりとなり得るターゲット企業に注目が集まるだろう」(両氏)
Semico ResearchのFeldhan氏は、「今やほぼ全ての企業が、合併買収の格好の標的となり得る」と指摘する。
とはいえ、IC InsightsのLineback氏は、「全体的にみると、買収対象の優良候補となるのは、売上高が10億米ドル未満の中規模の半導体チップメーカー(特に、Intersilのような売上高5億米ドル前後のメーカー)や、パワーマネジメントや無線通信、組み込みプロセッシングソリューションなどの市場でリーダーシップを持っているメーカーなどのようだ」と述べる。
同氏は、「時間の経過とともにターゲット企業の数が減ってくると、合併買収による事業の成長や拡大を目指す企業が、プレッシャーを受けるようになる」とも説明した。
まずは、2016年9月13日にルネサス エレクトロニクスが買収すると発表したIntersilを取り上げたい。(関連記事:ルネサス、Intersil買収を発表――約3200億円で)
IHS MarkitのLiao氏は、ルネサスはIntersilが持つ、パワーマネジメントやデータコンバーターといった汎用アナログ製品群を手に入れることになり、ルネサスにとっては大きな価値があると述べる。
Liao氏が「ルネサスはIntersilの買収によって、より幅広い分野、とりわけ産業分野での顧客を得ることになる」と考える一方で、IC InsightsのLineback氏は、ルネサスの狙いは車載になるとみている。Lineback氏は、Intersilを買収することで、ルネサスは車載や航空宇宙の分野で存在感を高めることができるだろうとしている。
実際、2015年におけるIntersilの売上高は5億2200万米ドルで、そのうち3分の2は産業およびインフラシステム(車載および航空宇宙向けを含む)分野での売上高が占めている。
ただし、Intersilの売上高は、2010年以来、縮小している。2010年の売上高は8億2200万米ドルだった。2015年も、2014年の5億6300万米ドルから7%減少している。
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