再編が進む半導体業界、TEDが見据える2020年:半導体商社トップインタビュー 東京エレクトロンデバイス(2/3 ページ)
2016年になっても収まる気配がない、半導体業界に吹き荒れるM&Aの嵐。この業界再編は、半導体商社にとっても変革期を迎えたことを意味するだろう。そこで、EE Times Japanでは、各半導体商社のトップに今後の戦略を問うインタビュー企画を進めている。今回は、東京エレクトロンデバイスで社長を務める徳重敦之氏に、同社が掲げる2020年までの中期経営計画について話を聞いた。
省エネ・省人に貢献する製品を
EETJ 自社ブランド事業のインレビアムは、どのように展開していますか?
徳重氏 当社がインレビアムで注力するのは2つある。1つ目は、ハイエンド品に特化した設計製造受託サービス(DMS)である。特に、産業、医療、車載機器の3つの分野だ。車載分野では、2015年10月にトーメンエレクトロニクスと豊通エレクトロニクスとパートナーシップを結び、インレビアムの拡販を共同で行うことを発表している。
2つ目は、省エネ・省人に貢献する製品である。以前、中国へ半導体を売り込みに行ったとき、「半導体はどこでも買える。今さら何をしにきた」と言われたことがあった。しかし、次に日本製の商品を紹介してみると、非常に喜ばれた。つまり、“日本製の商品”に対する信頼が高いのである。特に、省エネは、東南アジア地域で電気代が非常に高いため、国内で開発した製品に対する需要が大きい。未来永劫続く課題でもあるため、省エネ製品に焦点を当てている。
省人においては、光コムと共同で開発した3次元形状測定器「OPTED」を2016年6月に発表した。精密加工部品や金型を高速に測定でき、製造現場の検査効率向上に貢献する。今後も、光コムとの事例のような共同開発の取り組みと投資を推進していく。
EETJ 自社ブランドで開発する流れは、他の半導体商社も取り組んでいます。TEDとしてインレビアムを展開する強みはどこにあるのでしょうか。
徳重氏 画像処理技術が、他社と比較した強みになると考えている。当社はFPGAをベースとしたサポートに長くフォーカスしてきたからだ。これにより、画像処理技術に関するノウハウを蓄積できた。画像処理は、製造現場におけるロボット機器の「目」になるとともに、注力していく車載機器においても貢献できる部分だろう。
3事業一体でIoTを推進
EETJ IoTへの取り組みにも注力されています。
徳重氏 IoTシステムに必要なデータの収集、蓄積、分析、活用支援までワンストップでサポートする「TED Real IoT」を展開している。TED Real IoTは、他社のIoTに対する取り組みとは異なり、当社が取り組んできたEC、CN、インレビアムの3つの事業があるからできることだ。今までは、それぞれの事業がバラバラに存在していたが、IoTがハブとなってうまく統合され、シナジーが生まれてきている。
メーカーは、ビッグデータの取得まではできるが、実際にIoTで何をしたらいいか分からないケースが多い。当社は、2013年から一人一人の健康、好み、目的に合わせた献立を提案するサービス「Ohganic(オーガニック)」を運営しており、30万人のユーザーを抱えている。オーガニックでは、分析アルゴリズムを独自に開発しており、データを分析、アプリケーションの開発まで自社で挑戦してきた。このノウハウの蓄積も含めて、顧客のIoTシステム構築にワンストップで貢献できると考えている。
EETJ 他にはどんな取り組みがありますか?
徳重氏 2016年2月には、日本マイクロソフトと協力して、業界団体「IoTビジネス共創ラボ」を発足している。8社でスタートしたが、予想していた以上に会員企業の規模が拡大しており、2016年8月現在、既に177社となっている。
Microsoftとは、今までWindows Embedded OSの販売代理店として取引があるが、2016年4月からクラウドディストリビューターとして認定され、「Microsoft Azure」をはじめとするクラウドサービスの販売を開始している。IoTビジネス共創ラボでは、Microsoft AzureをベースとしたIoTソリューションの開発促進や、共同検証結果を発表するセミナーの開催など、エンドユーザー企業とのマッチングの場を提供していく。
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