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次世代不揮発メモリ、まずは出荷を――Everspin“完成形”にこだわらず

次世代不揮発メモリは幾つか候補はあるものの、実用化には至っていないものも多い。MRAM(磁気抵抗メモリ)メーカーEverspin TechnologiesでCEOを務めるPhillip LoPresti氏は、“完成形”にこだわらず、まずは量産して市場に投入することが重要だと主張する。

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まずは「市場に投入すること」

 メモリ市場ではこれまで、絶え間なく新製品が出現してきたが、今後はこうした動きが鈍るかもしれない。ベンダー各社が“完成形のメモリ”を投入する、という捉えどころのない難しい目標を追っているからだ。しかし、MRAM(磁気抵抗メモリ)メーカーのEverspin TechnologiesでCEO(最高経営責任者)を務めるPhillip LoPresti氏は、「完成形の実現を待たずに、まずは実際に技術を適用して生産を行い、市場に投入することの方が重要だ」と主張する。

 同社は現在、こうした戦略の一環として、GLOBALFOUNDRIESとの間で協業関係を構築している。この協業でGLOBALFOUNDRIESは、同社の22nm FD-SOI(完全空乏型シリコン・オン・インシュレーター)プロセスで製造するチップが、容量1Gビット未満の混載MRAMをサポートする予定だとしている。


Everspin TechnologiesのMRAM 出典:Everspin Technologies

 Everspin Technologiesは、実際に製品を出荷している数少ないMRAMメーカーの1つだ。また、Avalanche Technologyも2015年に、「業界初」(同社)をうたうSTT-MRAM(スピン注入磁化反転型磁気メモリ)チップを出荷している。Everspin Technologiesは、独自開発によるpMTJ(垂直磁化トンネル接合)をベースとしたSTT-MRAMを、標準的なCMOSプロセス(300mmウエハー製造ラインを使用)を適用し、低コストで量産しているという。

 Everspin TechnologiesのLoPresti氏は、EE Timesとの電話インタビューの中で、「当社は、これまで5年以上にわたり、米国アリゾナ州チャンドラーの工場において、第1世代のMRAM技術を適用し、130nmプロセスで組み込みMRAMを量産してきた。しかし、量産の要望に対応していくためには、GLOBALFOUNDRIESの300mmウエハー製造ラインがどうしても必要だった。GLOBALFOUNDRIESとの協業により、組み込みMRAMの市場投入に向け、数多くのチャンスを得ることができる」と述べている。

 Everspin Technologiesは、自社のMRAM向けアプリケーションを拡大すべく、エンタープライズストレージ向けアプリケーションの永続的メモリ(persistent memory)としてDRAMを置き換えるという取り組みを進めてきた。一方、LoPresti氏は、「当社の組み込みMRAMの魅力は、その汎用性にある。組み込みMRAMは、SRAMやDRAM、組み込みフラッシュのような最適化機能を備えている他、同じ組み込みMRAMを、コードやデータを保存する場合に使用することも可能だ」と述べる。

 LoPresti氏は、「当社はこれまで、スタンドアロンの部品に技術を導入し、特定の用途にターゲットを定めるという戦略をとってきた。組み込みMRAMは、汎用性だけでなく、拡張性にも優れている」と述べる。

 GLOBALFOUNDRIESで組み込みメモリ部門担当バイスプレジデントを務めるDavid Eggleston氏も、「組み込みMRAMは、他の代替メモリよりも高い汎用性と拡張性を備える。組み込みメモリはこれまで、コードを取得する役割を担ってきたが、現在では顧客企業から、不揮発性メモリの速度や効率を求める声が上がっている」と述べている。


Everspin TechnologiesのMRAMダイを拡大したところ。同社は第1世代の組み込みMRAMを、自社の工場で130nmプロセスで製造してきた。同社にとってGLOBALFOUNDRIESの300mmウエハー工場は、量産の需要を満たすために極めて重要だ

 Everspin TechnologiesのLoPresti氏は、GLOBALFOUNDRIESとの協業によって、より多くの不揮発メモリを市場に投入するきっかけになると話した。ただ、新しいメモリ技術を市場に導入するのは簡単なことではない。そのメモリ技術がコスト効果を発揮し、信頼性を確立できるようになるまでは時間がかかるだろう。だからこそ、量産体制を整え、その技術について実績を積むことが重要なのだ。GLOBALFOUNDRIESは、組み込みMRAMをユーザーに理解してもらい、低コスト化を進められる立ち位置にいるのである。

【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】

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