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V2Xの義務化、オバマ政権下では間に合わず?あと約100日(2/2 ページ)

オバマ大統領の政権下でV2X(Vehicle to Everything)通信の義務化を実現するのは、難しいかもしれない――。ある専門家は、このように懸念しているようだ。

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V2X義務化が遅れている4つの理由

 Freeman氏は、「V2X義務化が遅れている理由をどう見るべきか」とするEE Timesの質問に対し、「4つの理由があると考えている」と答えている。

 同氏は、1つ目の最も分かりやすい理由として、新しい5G(第5世代移動通信)規格の背後にある勢力を挙げている。業界には、モバイル通信事業者をはじめ、5Gベースの自動車向けアプリケーションを強力に推進する派閥が存在する。同氏は、「5Gは素晴らしい規格だ。しかし、5Gがタイムクリティカルな自動車通信技術(V2V)として成功を収めるには、まだ数年を要するだろう。われわれは今後、5Gが全ての遅延要件を確実に満たせるよう、試験を実施しなければならない」と述べている。

 2つ目の理由は、少ない周波数帯域をめぐる争いの存在だ。現行のオバマ政権は、ネットの中立性とインターネットアクセスの拡大を推進している。Freeman氏は、「いずれも素晴らしい取り組みだが、自社の事業のためにより多くの帯域幅の必要性を主張する企業が多すぎる」と述べる。

 DSRCは、自動車専用の無線通信チャネルである。FCC(米国連邦通信委員会)は1999年10月に、ITS(高度道路交通システム)向けとして5.9GHz帯(75MHz幅)を割り当てた。

 しかし自動車メーカーは、DSRC向け帯域を16年以上も使っていないため、この帯域を自動車業界から取り上げるべきだとする議論が生じている。同氏は、「つまり、今まで全く使っていないのだから諦めろということだ」と述べる。

 また同氏は、「DSRC向けに確保されている複数のチャネルの中には、セーフティクリティカルなアプリケーションの他、コマーシャルや補助メッセージなどに使われているものもある。セーフティクリティカル向け以外のチャネルを他の業界と共有するという、妥協案もある。FCCと協力していくことは可能だ」と述べる。

 Freeman氏は、3つ目の理由として、「V2Xは、自動車とインフラの接続を推進する規格であるため、独占的な権力を生み出す恐れがある」と述べる。

 4つ目の理由としては、米運輸省が、2016年9月末に発表した「連邦自動運転車指針(Federal Automated Vehicles Policy)」を完成させるのに手いっぱいで、V2X義務化を後回しにしていることが挙げられるという。

 米運輸省は、この自動運転車の指針を公表するにあたり、迅速な動きを見せた。自動車および技術業界は、その政策がカバーする範囲や奥深さには驚きと感銘を感じたようだ。Freeman氏は「自動運転が業界のホットな話題であることは間違いない。中でもTesla Motors(テスラモーターズ)の事故には大きな注目が集まった。政府が自動運転車方針の発表を急いだのも無理はない」との見解を示している。

 米運輸省は、自動運転車指針の中でもV2Xについて触れていないわけではない。同省は、自動運転においてV2VおよびV2Iが果たし得る役割についてはしっかりと認識している。


V2V通信の重要性。1台のクルマだけに搭載されたレーダーやセンサーを使うよりも、V2V通信を活用した方が、より広いエリアの情報を包括的に取得できる 出典:NHTSA

【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】

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