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ARMがもたらした“老舗コンサバ、新興アグレッシブ”の現状製品分解で探るアジアの新トレンド(9)(1/2 ページ)

ARMコアを使うことで、中国半導体メーカーも最新のCPUコアを用いたチップが作れるようになった。それは同時に、中国において、「老舗のメーカーは守りに入り、新興のメーカーに攻めに出る」という状況をもたらしている。

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アジア製チップを搭載する「MXQ Pro」

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 中国からは2016年になって数多くの64ビット化されたOTT(Over the Top)、STB(Set Top Box)製品が発売されている。その多くはBOXタイプのコンピュータだ。ARMコアを用い、GPUを搭載し、H.264/H.265のデコーダー/エンコーダーを持ち、HDMI、USB、LAN端子を持っている。

 今回報告するのは、その中でも比較的リーズナブルな価格で販売される「MXQ Pro」である。MXQという従来の製品があり、そのアップグレード版となる。4K出力や64ビット化を果たしたものが「Pro」になる。図1は、MXQ Proの外観および分解の様子だ。分解した、といえるほどの構造はしておらず、筐体の上蓋を外すと基板がむき出しになり、基板を取り出せば分解は終了となる。わずか3分ほどで分解は完了する(逆に言えば製造もラク!!)。


図1:中国で発売される「MXQ Pro」(クリックで拡大) 出典:テカナリエレポート

 図2は取り出した基板のファンクションチップの接続関係を表した「チップ系統図」である。メインのプロセッサは、中国の半導体メーカーAmlogicのアプリケーションプロセッサ「S905」だ。その先にはインタフェース用の台湾製チップが並んでいる。1つはLAN用のコントローラー、台湾IC+のチップ、4チャンネルあるUSBのハブコントローラーとして台湾Genesys Logicのチップ、Wi-Fiチップとして、台湾Realtekのチップが用いられる。さらに、図には記載していないが、2種類のメモリチップが存在する。8GバイトのNAND型フラッシュメモリと4GバイトのDDR3 SDRAMだ。これらは韓国製である。オーディオ用ICは中国製となっている。


図2:MXQ Proの主要チップ系統図(クリックで拡大) 出典:テカナリエレポート

 MXQ Proの内部はほぼアジア製チップが占める。中国、韓国、台湾のチップでできているようなものだ。この上に、最新の64ビット版のAndroidが走る。

 Amlogicは従来、OTT、STBのような市場にはやや遅れて参入し、圧倒的なローコストとそこそこの性能を提供することでビジネスを行ってきた。中国系のロジック半導体メーカーとしては決してトップを走るわけではないが、ARMコアなどを使い、コモディティ化した分野で存在を示してきた。

 本製品に使われている「S905」は、64ビット化されたARMのCPU「Cortex-A53」を4基搭載、GPUはARMの「Mali 450」という若干非力なものを5基積んである。製造はTSMCの28nm。2011年にQualcommが最初の28nmを使い始めてからおおよそ5年たった世代のプロセスだ。歩留まりも性能も安定し、最も高いパフォーマンスを享受できる時期に差し掛かっている時期に、TSMCの28nmプロセスを活用しているという状況だ。

 多くのトップクラスを走るメーカーに比べると、性能が見劣りする上に、最先端プロセスを用いるわけでもなく、成熟環境を使うといった“二番せんじ”の印象はぬぐえない。

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