EUV光源で「世界最高水準」の発光効率5%を実現:さらなる微細化の実現へ
ギガフォトンは、開発中の極端紫外線(EUV)スキャナー用レーザー生成プラズマ(LPP)光源における、半導体量産ラインでの稼働を想定したパイロット光源が完成し、出力105Wの安全運転と、発光効率5%を実現した。最先端半導体製造ラインの実現に向けて大きく前進したという。
デューティー比95%
ギガフォトンは2016年10月、開発中の極端紫外線(EUV)スキャナー用レーザー生成プラズマ(LPP)光源における、半導体量産ラインでの稼働を想定したパイロット光源*)が完成し、出力105Wの安全運転と、「世界最高水準」である発光効率5%を実現したと発表した。
*)パイロット光源:ギガフォトンがEUVリソグラフィ量産工場対応仕様で設計した光源である。
同社はこれまで、20μm以下の微小ドロッブレットの供給技術、固体レーザーによる改良型プリパルスと高周波放電励起式三軸直交型CO2レーザー増幅器による高光品位メインパルスレーザーの組み合わせ、エネルギー制御技術の改善、独自の技術である磁場を使ったデブリ除去技術を開発してきた。2016年7月は、プロトタイプ機において、最低130Wの出力で119時間の連続運転にも成功したと発表している。
今回のパイロット光源は、EUVスキャナーに組み込むことを前提として設計したシステムに、上記の技術を組みこんだものである。プロトタイプ光源よりも高いデューティー比95%で、出力105Wの安全運転、発光効率5%に成功した。これは、半導体生産のスループットを決定する平均出力100Wに相当し、現時点でユーザーの要求を上回る性能という。同社は、「最先端半導体ラインの実現に向けて大きく近づいた証」と語る。
同社副社長兼CTO(最高技術責任者)の溝口計氏は、今回の発表に対して「高出力、低ランニングコストでの安定稼働可能なEUV光源が、市場導入間近であること示している。当社の技術力は、次世代露光技術としてEUVスキャナーの開発を加速させるとともに、半導体産業の発展に寄与し、IoT社会の実現に貢献すると確信している」と述べている。
なお、今回の研究開発は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「戦略的省エネルギー技術革新プログラム事業」における成果を活用しているとした。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- Samsung、10nm SoCの量産を2016年内にも開始か
Samsung Electronics(サムスン電子)が10nm FinFETプロセスを適用したSoC(System on Chip)の量産体制を着々と整えているようだ。「Galaxy Note 7」の発火問題で同社のファンドリー事業も停滞するとみられているが、最先端プロセスの実用化に向け、開発を進めている。 - ソニー製チップの採用でFD-SOIへの関心高まる?
28nm FD-SOIプロセスを採用したソニーのGPSチップが、中国のスマートウォッチに搭載された。FD-SOIプロセスに対する関心が高まる可能性がある。 - 半導体プロセス技術、開発競争が過熱
FinFETの微細化が進む一方で、FD-SOI(完全空乏型シリコン・オン・インシュレーター)にも注目が集まっている。専門家によれば、2025年までは28nm FinFETプロセスが優勢だとするが、それ以降はFD-SOIが伸びる可能性もある。 - ムーアの法則、実質的には28nmが最後か
7nm、5nmプロセスの実現に向けて微細化の研究開発が進められているが、設計の現場は当然ながら、より現実的だ。28nm以前のプロセスを適用した製品が大半を占め、さらに設計で最も多く使われているのは65nm以前のプロセス、という統計データがある。 - “他にないスライス技術”がSiCの生産効率を4倍へ
半導体製造装置メーカーであるディスコは、今までにない手法を用いたレーザー加工によるインゴットスライス手法「KABRA(カブラ)」プロセスを開発したと発表した。SiC(炭化ケイ素)ウエハー生産の高速化、取り枚数増を実現し、従来方式と比較して生産性を4倍向上させることが可能という。 - 2020年、5nm世代でEUV時代が到来か
ASMLは2016年4〜6月にEUV(極端紫外線)リソグラフィ装置を4台受注し、2017年には12台を販売する計画を明かした。これを受けて業界では、EUV装置によるチップ量産が、5nmプロセス世代での製造が見込まれる2020年に「始まるかも」との期待感が広がっている。