ルネサス、中期経営数値目標を上方修正:営業利益率20%以上めざす(2/2 ページ)
ルネサス エレクトロニクスは2016年11月2日、2016年12月期第2四半期業績とともに中期成長戦略を発表し、今後4〜5年先を目標に売上総利益率50%、営業利益率20%以上を目指す方針を示した。
インターシルとの統合「順調」
設備投資については、「これまで(構造改革として)余剰の生産設備を削減してきたが、現在は、旺盛な需要により相当頑張らないと供給できない状況になり、設備投資を行って需要に応えている状況」(呉氏)と説明。ただ「工場の増床や新設などは行わず、今あるクリーンルームを有効活用する設備投資にとどめる」とした。
また、自社工場の活用は、「信頼性が求められる車載向けのプロセスや、すり合わせが必要な主にアナログ向けのプロセスなど、プロセス自体が競争力に持つものに限る。逆に微細プロセスを使うマイコンなどデジタル製品については、外部工場への委託を行う。(2017年サンプル出荷予定の)28nmプロセス採用車載マイコンの生産も、自社工場では行わない」との方針を示した。
2017年上半期中の買収完了を目指すIntersilとの統合作業については、「順調に進んでいる」とし、ドイツ、米国、韓国の各当局から承認を得ていることを明かし、「2017年上半期末、6月末ではなく、もう少し早いタイミングで(買収を)完了する見込み」との見通しを示した。
なお、このほど合意が発表されたQualcomm(クアルコム)によるNXP Semiconductors(NXPセミコンダクターズ)の買収に関して呉氏は、「Analog Devices(アナログ・デバイセズ)によるLinear Technology(リニアテクノロジー)の買収なども含め、昨今の業界再編の動きにより、競争は激しくなるだろう」と前置きしつつ、「われわれも苦渋の決断で携帯電話機向け半導体から撤退しその結果、今のような強い車載向け半導体事業を築いてきた。(QualcommがNXPを買収し)携帯電話機向けも車載向けも手掛けるというのは、製品ライフサイクルなどさまざまな違いがあり、簡単にはいかないだろう」との見方を示した。
第2四半期業績は減収減益に
この日、ルネサスが発表した2016年12月期第2四半期累計(4〜9月)の業績は、売上高3046億円(前年同期比15.6%減)、営業利益331億円(同47.5%減)、純利益194億円(同66.2%減)で、減収減益だった。同期間の売上総利益率は42.0%。営業利益率は10.9%。
第2四半期(7〜9月)3カ月間業績は、売上高1526億円、営業利益146億円、純利益94億円。いずれも当初予想を上回ったものの前年同期に比べると減少した。Non-GAAPベースで、売上総利益率は42.5%、営業利益率は10.8%で、「季節要因による費用増により前四半期比で減少した」(常務兼最高財務責任者 柴田英利氏)
2016年7〜9月業績について、柴田氏は「円高による為替影響、非注力製品からの撤退影響があり売り上げは下方圧力が強かったものの、自動車向けを中心に需要が堅調で、想定よりも震災影響が軽減され、売上高は第1四半期(1520億円)から微増になった」とする。
2016年12月期第3四半期(10〜12月)業績については、売上高1614億円、売上総利益率は42.8%、営業利益率12.9%と、いずれも第2四半期比増を見込む。
第3四半期について「為替影響が落ち着き、(第2四半期までの)震災影響がない上、クルマ向けを中心に堅調な需要を背景に、比較的大きな増収となる」(柴田氏)とした。
なお、その結果、2016年12月期通期(4〜12月/決算期変更のため9カ月累計)業績予想は、売上高4660億円、営業利益540億円、純利益370億円で、売上総利益率42.3%、営業利益率11.6%を見込んでいる。
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