QualcommのNXP買収、業界に及ぼす影響(前編):半導体史上最高額の買収劇(3/3 ページ)
Qualcomm(クアルコム)が、NXP Semiconductors(NXPセミコンダクターズ)の買収を正式に発表した。この買収の影響を、車載分野を中心に検証していきたい。
Snapdragonとi.MXの対立は?
両社が対立する分野は、車載市場におけるアプリケーションプロセッサだ。
Qualcommは、モバイル向けプロセッサのSnapdragonを車載インフォテインメントシステムにも利用したい考えだ。一方、NXPにはより歴史の長い「i.MX」がある。
Demler氏は、「車載分野は、少なくともいまのところは本格的な対立には至っていない。QualcommのSnapdragonは現時点では、量産車に搭載されていないからだ」と述べている。
ただし、車載アプリケーションプロセッサ市場に両社の製品を投入することについては、賛否両論がある。
Krewell氏は、「『i.MX6』の後継プロセッサである『i.MX8』は、車載プロセッサとしてはぜい弱であると懸念される。ただし、センサーフュージョンやADASには強い。一方、QualcommのSnapdragonはGPU性能が優れているため、先進のディスプレイを提供できる」と説明している。
Krewell氏とDemler氏の両氏は、社内の話し合いでは最終的に、優れたマルチメディア機能を備えるQualcommのSnapdragonが勝利するのではないかと予想しているという。
Demler氏は、「製品ロードマップは間違いなくSnapdragonアーキテクチャに移行するだろう。そのマイナス面は、モバイルチップであるSnapdragonはCAN(Controller Area Network)バスのような車載機能を備えていないことだ」と述べている。
NXPの自動車チームは、次世代のi.MX8チップで車載市場のシェア拡大を狙う。i.MX8はまだ生産を開始していないが、Demler氏によれば車載用途専用チップだという。
(後編に続く)
【翻訳:滝本麻貴、田中留美、編集:EE Times Japan】
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