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Samsung、Harmanを80億ドルで買収へ車載ビジネスへ触手を伸ばす

Samsung Electronicsが、コネクテッドカー技術を手掛けるHarman Internationalを80億米ドルで買収すると発表した。根底にあるのは、車載ビジネスに対するSamsungの野心だ。

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Samsungが車載ビジネスへ

 Samsung Electronics(サムスン電子)は2016年11月14日(韓国時間)、米国の自動車技術グループであるHarman Internationalを80億米ドルで買収すると発表した。同じ日、ドイツのSiemensはEDAツールを手掛ける米Mentor Graphicsを45億米ドルで買収すると発表している。

 SamsungとSiemensはいずれも自動車分野では影響力のあるプレイヤーではないが、それぞれの買収の動機は似通っている。高度なコネクテッドカーや自動運転車向けの技術は今後の成長市場であり、その“分け前”にあずかりたいという思いだ。

 Siemensは、MentorのEDAツールが、自動運転車を含むスマートカーやコネクテッドカーの開発に不可欠であるとみている。

 一方、韓国のエレクトロニクス最大手であるSamsungは、Harmanの買収を通じて、成長中の車載技術市場を一挙に席巻することを狙う。

 現在、自動車メーカーとティア1サプライヤーは、コネクテッドカーの中枢を担うシステムにおける設計の複雑さやセキュリティの確保といった、前例のないレベルの課題に直面している。

 これまで自動車を手掛けていなくても、次世代の高度な自動運転車の世界を制する可能性は十分にある。とはいえ、そのためには自動車向けのソリューションを備える必要がある。

 Harmanの買収は、Samsungによる外資系企業の買収の中で最大規模のものになるといわれている。現在は、Harmanの株主からの承認を待っている状況だという。

Samsungの自動車ビジネス参入への野心

 Harmanは、コネクテッドカー向け技術でよく知られる企業である。同社はハイエンドのマルチメディアシステムやナビゲーションシステム、ビジュアルディスプレイシステムなどを提供している。最近では、複数の自動車セキュリティ技術関連企業を買収することで、自動車セキュリティ関連製品のポートフォリオを強化した。Harmanによると、2016年10月までの12カ月間においてグループ全体の売上高が70億米ドルに達したほか、2016年6月時点での受注残は240億米ドルに及ぶという。

 Samsungはプレスリリースの中で、最新の自動車技術を手掛けるHarmanの買収によって、同社は「急速に成長する大規模なコネクテッドカー技術市場の中でも特に自動車エレクトロニクスの分野で、重要な存在感を示せるようになる」と述べた。

 確かに、Samsungは自動車ビジネスに参入する野心を隠しておらず、自動車エレクトロニクスは同社にとって「戦略的優先事項」であると公言している。

 IHS Technologyの自動車半導体部門で主席アナリストを務めるLuca De Ambroggi氏によると、現実には、Samsungの自動車エレクトロニクス分野での存在感は取るに足らないレベルだという。今のところ、Samsungは「主に車載インフォテインメントに用いられるNAND型フラッシュメモリという半導体領域で強みを持つ」とDe Ambroggi氏は述べた。

 ただ、モバイル機器やディスプレイ、半導体におけるリーダー的存在であるというSamsungのバックグラウンドを考えると、自動車に向けたスマート技術/コネクテッド技術にも触手を伸ばすのは自然な流れだろう。SamsungによるHarman買収の目的は、QualcommによるNXP Semiconductors買収の動機と何ら変わらないのである。

 だが、大きな違いが1つある。Harmanを買収することで、Samsungはサプライチェーンの中で“レベルが1つ上がる”ということだ。もしHarmanがSamsungのチップしか採用しないようになれば、他の車載用チップサプライヤーにとっては大きな問題となるだろう。De Ambroggi氏は、「他の半導体メーカーの間でも、ティア1サプライヤーを買収するという動きが出てくるかもしれない」との見解を示している。

【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】

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