Samsung、スマホ業績の悪化を半導体事業が補てん:Galaxy発火事故で大打撃も
Samsung Electronicsの2016年第3四半期の業績は、スマートフォンの事業は大幅に悪化したものの、好調な半導体事業がそれを補う形となった。
サムスン、半導体事業が好調
世界最大のスマートフォンメーカーであり、世界第2位の半導体チップメーカーであるSamsung Electronics(サムスン電子)は、「当社のスマートフォン事業部門は、フラグシップスマートフォン『Galaxy Note 7』のバッテリー発火事故により、大きな打撃を受けたものの、好調な半導体事業がそれを補てんする形になりそうだ」と発表した。
同社は、2016年10月27日(韓国時間)に発表した報道向け発表資料の中で、「2016年第3四半期における営業利益は、5兆2000億ウォン(約4762億円)で、前年同期比では2兆1900億ウォンの減少となる」と述べている。同社は以前の予測の中で、営業利益を7兆8000億ウォンと見込んでいたが、Galaxy Note 7の生産中断による損失を反映させるために、下方修正を行っていた。
同社の2016年第3四半期におけるモバイル製品の営業利益は、2015年比で98%減少し、2008年第4四半期以来、最も低い水準となった。世界のスマートフォン需要は、2016年第1四半期に初めて減少に転じている。Samsungはもともと、Galaxy Note 7の市場投入によって、Appleの「iPhone」のシェアを奪い取ることができると考えていた。
一方で、Samsungの半導体部門の2016年第3四半期における営業利益は、3兆3700億ウォンで、2015年第3四半期以来、最高を記録している。同社の半導体事業は、高性能モバイル機器およびサーバ製品向けメモリチップの需要が増大したことを受けて、成長した。また、ミドルエンドやローエンドのSoC(System on Chip)やイメージセンサーの他、14nmプロセスのファウンドリー製品などの需要も大きかったようだ。
Samsungはファウンドリ市場において、14nmプロセスを採用することにより、TSMCの16nmプロセス技術に対して競争を繰り広げてきた。TSMCは2016年第3四半期に、予測を上回るスマートフォン需要を受けて、世界ファウンドリー市場におけるシェアを55%まで拡大している。アナリストによると、AppleのiPhone向けプロセッサ「A10」の製造権に関しては、TSMCがSamsungを打ち破って獲得したとみられる。TSMCには、新しいパッケージング技術「InFO(Integrated Fan Out)」を開発したという競争上の優位性がある。
台湾のコンサルティング会社Yuanta Investment ConsultingのアナリストであるJae-yun Lee氏は、「Samsungは、生産能力の面でTSMCに差をつけられ、2016年中にA10プロセッサの製造権を失うことになるだろう。しかしAppleにとっても、半導体チップ委託先を複数確保する方がメリットが大きいため、Samsungは2017年に、Appleから再び「A11」(仮称)プロセッサの製造を一部受注するとみられる」と述べている。
Samsungは、「2016年第4四半期のメモリチップ売上高は、前年同期比で増加する見込みだ。2016年第4四半期中に、業界初となる10nmプロセスチップを実現することにより、半導体業界をリードしていきたいと考えている」と主張する。
一方、TSMCは2017年第1四半期に、同社にとって初となる10nmプロセスチップの出荷を開始する予定だとしている。TSMCは、ハイエンドスマートフォン向けプロセッサの製造プロセスは、2017年中に16nmから10nmに移行するとみている。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- Samsung「Galaxy Note 7」を分解
iFixitが、Samsung Electronics(サムスン電子)の最新スマートフォン「Galaxy Note 7」を分解した。 - 「iPhone 7 Plus」を分解
2016年9月16日に発売されたApple(アップル)のスマートフォン「iPhone 7 Plus」を、iFixitが分解した。 - Intel、IoTを巡ってARMと対決
Intelがこのほど、自動車、産業機器市場向けのリアルタイム性能を備えた新SoCを発表したことで、ARMとのIoT(モノのインターネット)の市場を巡る戦いが激化しつつある。 - 中身が大変身した「iPhone 7」とその背景
2016年9月に発売されたAppleの新型スマートフォン「iPhone 7」。一部では、あまり目新しい新機能が搭載されておらず「新鮮味に欠ける」との評価を受けているが、分解して中身をみると、これまでのiPhoneから“大変身”を果たしているのだ。今回は、これまでのiPhoneとiPhone 7の中身を比較しつつ、どうして“大変身”が成されたのかを考察していこう。 - Note 7の発火問題、要因はバッテリー以外?
発火問題を受けて、Samsung Electronics(サムスン電子)はついに、「Galaxy Note 7」の生産停止を決断した。当初はバッテリーが要因とみられていたが、それ以外である可能性も出てきている。 - ARM、TSMCと7nm FinFET開発で協業
ARMとTSMCが、データセンサーやネットワークインフラ向けに、7nm FinFET開発で協業する。サーバ市場での勢力拡大に積極的なARMは、7nmプロセスの採用によるチップの高性能化を非常に重要視していると専門家は話す。