ルネサス、フィン構造のMONOSフラッシュを開発:16/14nmマイコンへの混載に向け(2/2 ページ)
ルネサス エレクトロニクスが、フィン構造を採用したSG(Split-Gate型)-MONOSフラッシュメモリセルの開発に成功したと発表した。フィン構造としたことで、FinFETなど先端のロジックプロセスとの親和性が高くなり、次世代の16nm/14nm世代マイコンに混載できるようになる。
書き込み電圧を段階的にかける
ルネサスによれば、フィン構造のSG-MONOSフラッシュメモリセルにおいて、書き込みおよび消去動作を確認したところ、従来のSG-MONOSフラッシュメモリセルに比べて、書き込み/消去速度としきい値電圧変動幅が改善したという。
フィン構造のSG-MONOSフラッシュメモリセルの動作特性(その1)。従来(=フィンのないプレーナ構造)のSG-MONOSフラッシュメモリセルに比べて、動作特性が改善されたという(クリックで拡大) 出典:ルネサス
フィン構造のSG-MONOSフラッシュメモリセルの動作特性(その2)。I-V特性を見ると、赤い点で示されているフィン構造では、電流が急峻にオン・オフされていることが分かる。つまり、高速な書き込み/消去が可能ということだ(クリックで拡大) 出典:ルネサス
さらに、今回発表したSG-MONOSフラッシュメモリセル向けに、書き込み電圧を段階的にかけていく、ステップパルスという書き込み手法を取り入れた。フィン構造では、一気に電圧をかける(定電圧パルス)と、フィンの先端部(とがった所)に電界が集中して膜が破壊され、特性劣化を引き起こすという課題がある。そのためルネサスは、ステップパルスを採用することで、書き込み電圧の印加による電界の集中を緩和させた。その結果、フィン構造のSG-MONOSフラッシュメモリセルの経年劣化が減少することを確認したという。ルネサスによると、書き換え回数は、データ保存用フラッシュメモリで25万回を実現した。
フィン構造にしても、良好な電荷保持特性を維持したという。特に車載用途で重視されるデータ保持特性は、25万回の書き換え動作後に150℃で10年以上と、従来と同等の信頼性を備えるとする(クリックで拡大) 出典:ルネサス
塘氏は「今回の開発は、SG-MONOS構造を16nm/14nm世代以降のフラッシュメモリにスケーリングできることを示している」と述べた。
ただし、今回はあくまで、(メモリセルの)トランジスタ1個の特性を確認しただけである。ルネサスの生産本部 デバイス開発統括部 先端デバイス開発部 部長の山口泰男氏は、今後について、「64Mバイトなどのメモリセルアレイを構成した時に、均一に動作できるかどうか。それを確認していくのが次のステップ」と説明した。2023年の実用化を目指すという。なお、その際どこで製造するかについては今後決めていくという。
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