まるで“空飛ぶプロセッサ”、進化する中国ドローン:製品分解で探るアジアの新トレンド(11)(1/2 ページ)
商用、ホビー用ともにドローン市場で大きなシェアを持つ中国DJI。そのドローンの進化には、目を見張るほどだ。2016年前半に発売された「Phantom 4」には、実に90個を超えるチップが使われている。
ドローン市場を掌握している中国DJI
日本でもほぼ毎日のようにドローンに関するニュースや記事が報道紙面をにぎわしているが、2016年現在、商用、ホビー用を合わせて、実際に飛行するドローンの半数はおおよそ、中国DJI製である。筆者は、初代から最新機種までのDJIのドローンを実際に飛ばし、分解してきたが、その進化は著しい。「ただ飛ばす」から、「安全にかつ、高度に飛ばす」まで、わずか数年でまったく別物と呼べるほどに進化を続けている。
本記事では2016年前半の製品「Phantom 4」を扱うが、さらに進化した「MAVIC Pro」も既に発売されていて、DJIドローンの進化は止まらない。
ホビードローンでは、他にもユニークな製品を提供するメーカーは多い。同じ中国のXAirCraft、フランスのParrotなどである。そのどれもが、買ったその日から容易に飛行でき、万が一墜落などで壊れてしまっても、各コンポーネントをネットなどで簡単に注文し、ユーザーの手で直すことができる。こうした流通の広さも魅力の一つになっている。日本メーカー製品の弱点の1つでもある、販売の仕方の差がDJIの独走を生んだ可能性もあると筆者は考えている。
DJIのドローンは星型などの特殊ネジで封じられており、少々分解の難易度は高い。ドローン全体を生かして電子基板が配置されており、橋脚に操作用の無線アンテナ、6軸センサーが2セット埋め込まれている。また本体の上部カバーの裏にはGNSS(GPS)位置情報システムが搭載されている。多くのコンポーネントは、機能ごとに配置されていて、ノイズや信号干渉までもが考慮されているようだ。
カメラ部は図1のように、本体とは完全に分離されており、わずかな配線だけでつながっている。カメラは、XYZ軸を管理する3つのモーターと、カメラユニット自体を冷却するための空冷ファンの4モーターから構成される。
ドローンといえば、4枚羽根や6枚羽根,8枚羽根用だけのモーターで構成されていると思われがちだが、カメラを備えるドローンは、カメラの向きをコントロールするためのモーター(Gimbal)雲台がセットされており、実際には4枚羽根であっても6〜8個のモーターで動いている。
図2は、リモートコントローラーを含めた、DJIのPhantom 4の全部品を分解したコンポーネントを並べたものである。
ワイヤや配線、ネジなどを省いてあるが、Phantom 4には、膨大な量の電子基板、モーター、カメラセンサーや電池が用いられている。基板14枚を用いる製品は、PCやTV、スマートフォンではありえないことだ。多くの電子基板が、形を変え、大きさを変えて、ドローンという筐体の中に埋め込まれているわけである。
電池を取り囲むように設置される電源基板、大電流を必要とするモーター制御基板、ソナーや6軸センサー、さらには電源ブリッジ基板も備わっている。
本体にはカメラが4基備わっていて、機体下部、機体全面に2基ずつ設置されている。これらのカメラや前記、ソナー+6軸センサーなどで得られた値を用い、本体メイン基板で空間認識処理がされている。
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