まるで“空飛ぶプロセッサ”、進化する中国ドローン:製品分解で探るアジアの新トレンド(11)(2/2 ページ)
商用、ホビー用ともにドローン市場で大きなシェアを持つ中国DJI。そのドローンの進化には、目を見張るほどだ。2016年前半に発売された「Phantom 4」には、実に90個を超えるチップが使われている。
「空飛ぶプロセッシング」
主にこの空間認識処理を行うのは、米Movidius(2016年9月にIntelが買収)のビジョンプロセッサだ。MovidiusのチップはGoogleの「Project Tango」(3次元認識技術)で採用されたことで一躍有名になった。その他にも、メイン基板には各種プロセッサやシステム制御のマイコンが搭載されていて、さながら「空飛ぶプロセッシング」という様相だ。
実際にテカナリエでは、ほぼ全てのチップを開封した。2.4GHz帯対応のコントロール通信、モーター制御のコントローラーIC、カメラ処理エンジン、ビジョンプロセッサのホスト、電池監視マイコンなど、全てのチップを開封した上で内部の仕様を調査した。結論から言えば、Phantom 4には、なんと27個もCPU(コントローラーを含む)が搭載されているのである!!
27個のうち、1チップに4コア搭載しているものもあれば、1コアのものもあり、1コアのものは各モーター部に1つずつ搭載されている。CPUとしてはARMコアを採用しているものが大半だが、Texas Instruments(TI)の16ビットCPU「MSP430」もある。
図3は、Phantom 4の全チップおよびセンサーユニットを並べたものである。実に78個ものチップがPhantom 4には用いられている。
(1つのパッケージに2チップ以上が搭載されるケースもあるが)使用される半導体パッケージ数は、一般的なスマートフォンのほぼ倍の数量だ。今後のドローンに、スマートフォンと同じように、LTEなどの通信機能やマイクロフォン、圧力センサー、気象センサーなどが搭載された場合には、100個以上ものチップが搭載されることになるだろう。さらに、物をつかむアームなどが組み合わされた場合には、使われる半導体チップの数はさらに増えていくだろう。
Phantom 4に搭載される78個のチップのうち、7個がモーター制御チップである。うち6個のチップには、パッケージに「DJI」のロゴが刻まれている。
半数以上のチップはパワー半導体で、主にモーターの出力に使われている。次いで多いのがセンサー群だ。センサーのパッケージ内には2〜4チップが搭載されているので、パッケージ数より実際のチップ数は多い。実際のチップ数はトータルで90個を超える。
多くのチップは欧米製(米国製が最も多い)だが、前述のように、DJIのロゴが刻印されている中国チップも使われている。
詳細は弊社テカナリエ・レポート(有料)にて確認していただきたいが、中国メーカーの他のチップも採用されている。DJIのドローンは、買ってきたチップを「並べてつないだだけ」のドローンから、同社独自仕様のチップや新たな機能を徐々に取り込んだ高性能なドローンへと、確実に進化を遂げている。
飛ばすノウハウに加えて、新たなアイデア実現に向けたチャレンジ、そして独自のチップを搭載することによる差異化……。DJIのドローンからは今後も目が離せない。
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