ルネサス、マイコンを内蔵した電池管理IC製品化:電動工具、自転車、ドローン
ルネサス エレクトロニクスは2016年12月、3〜10セル構成の産業向けリチウムイオン電池管理ICとして「業界で初めてマイコンを内蔵した」という新製品(2種)を発表した。
3〜10セル対応電池管理で「業界初のマイコン内蔵」
ルネサス エレクトロニクスは2016年12月、電動工具や電動アシスト自転車(E-bike)などに搭載される3〜10セル構成のリチウムイオン二次電池管理用ICとしてマイコンを内蔵した製品(2種)を2017年1月から量産すると発表した。マイコンを内蔵したことにより、「産業用の多様な電池システム仕様に対して、柔軟に対応できる」とする。
新製品2種は、3〜8セル対応の「RAJ240090」と、3〜10セル対応の「RAJ240100」で、いずれも産業用リチウムイオン電池管理用途に向ける。
電動工具やE-bike、充電式掃除機やドローン、無停電電源装置(UPS)など、産業用途でのリチウムイオン電池の使用が拡大している。ただ、リチウムイオン電池は発火や発煙の危険があり、安全性を確保したシステム構築が不可欠。リチウムイオン電池を搭載するには、専門的な電池制御ノウハウが必要で、高度な制御回路設計技術を要する。
そうした中でルネサスは、「産業向けリチウムイオン電池管理ICとして業界初」というマイコン(RL78 CPUコア)を内蔵し、ソフトウェアで柔軟に多様な電池システム仕様に対応できる電池管理ICを実現した。電池残量の計測や、過電圧、過電流などの安全監視機能(アナログフロントエンド部)とマイコンが1パッケージ化されたため、電池制御の電圧測定に必要な高精度A-Dコンバーターとマイコンとのマッチングを事前に調整した上で提供するため、キャリブレーション作業が大幅に削減できるとする。その他、新製品は、電源、FETドライバー、リアルタイムクロックなどを搭載し、電池管理システム部分のトータルコストを従来品よりも「30%削減可能」(同社)とした。
電源オフ時も監視可能な「超低消費モード」
新製品は、消費電流を25μAまで抑制する「超低消費モード」を備え、電池監視機能を電源オフ時でも常時稼働させることができる点も特長。電池の劣化や故障などを異常記録として内蔵のマイコンに保存しておく機能もあり、電源がオンになった際にマイコンからアラームを発することで充放電を禁止し、リチウムイオン電池の発火、発煙を未然に防止できる。さらに、電池管理ICは、NチャネルMOSFETを電池のプラス側に配置できるシステム構築が可能なため、電池管理ICが故障した場合でも、システムを安全に停止させられる。一方、マイコンが暴走状態に陥った場合でも、アナログフロントエンド部の電池保護機能は、独立した動作が可能のため、フェールセーフを加味した高信頼性システムを実現できる。
レファレンスなどを豊富に提供へ
ルネサスは、専門的な電池制御ノウハウがなくても安全性の高い電池システムを開発できるように、レファレンスソフトウェア、レファレンス回路図、セットアップマニュアルや評価ツールなど、開発立ち上げをサポートする豊富なツールをソリューションとして順次提供する方針だ。
新製品2種はいずれも64ピンQFP(ピン間隔0.5mm)パッケージを採用。動作電圧は4.0〜50V、動作周囲温度は−20〜+85℃。電圧計は分解能15ビットの、電流計は分解能18ビットのΣΔ型A-Dコンバーターを搭載している。サンプル価格は、3〜8セル対応のRAJ240090で1000円(税別)としている。
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