位置情報を可変できる車載用HUD 「世界初」技術:オートモーティブワールドに展示
コニカミノルタは2017年1月、「世界初」となる自動車の運転手が認識しやすいよう位置の情報を可変できる「3次元拡張現実ヘッドアップディスプレイ(3D AR HUD)」を開発した。
位置の情報を可変できる
コニカミノルタは2017年1月、自動車のフロントガラスに運転手に必要な情報を表示する「3次元拡張現実ヘッドアップディスプレイ(3D AR HUD)」を開発したと発表した。現行の技術とは異なり、対象物の距離や運転速度に合わせて、運転手が認識しやすいように位置の情報を可変できる「世界初」(同社)の技術という。
現在採用されているHUDは、フロントガラスに映像を表示するのが主流である。運転手への注意喚起を、運転手の視線をそらさずに伝えることが可能となっている。しかし固定された位置(3〜5m)に虚像が見えるため、複数の情報を重ねて表示する場合、運転手の視線が移動すると表示がズレてしまうことがあった。
同社 光学事業本部 事業本部付インダストリー・ソリューション事業推進部長の山田範秀氏は「3D AR HUDは、センシングによって得られた人や障害物などの情報を、対象そのものの位置に重ねて表示できるAR機能を持つ」と語る。情報の位置をリアルタイムに可変できるため、運転手の視線がずれても正確な情報を伝えることができる。
速度に合わせた距離に映像を表示することも可能。時速40kmで走行しているときは40m先、高速道路などで時速80km走行しているときには80m先に表示できるとする。
従来との技術との詳細な違いについて、山田氏は「実用化するまでは非公開」と語る。プロジェクターやコンバイナーなどの基本的な構造は従来と同じだが、表示用の機構が違うとまでは教えてくれた。Texas Instruments(TI)のDMDチップを用いているが、実用化に向けて価格やサイズを検討していく中で変更する可能性もあるという。
2018〜2019年の実用化へ
開発した理由について、同社は「これまで培った光学技術を応用した展開を考える中で、安全運転支援にたどり着いた。自動運転化は今後進んでいくが、レベル5の完全自動運転化までには時間がかかる。運転手の判断による操作がこの先も必要とされているため」と語る。2016年4月から東京大学の石川・渡辺研究室と高速に3D虚像投影する技術に関する共同研究を行ってきた成果の1つとなる。
3D AR HUDは、2017年1月18〜20日に東京ビッグサイトで開催される「第9回オートモーティブワールド」に参考出展する。実用化に関しては「2018〜2019年を目指す」(山田氏)とした。
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