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本当に怖い「飛び込み」の世界、知っておきたい4つの知識世界を「数字」で回してみよう(38) 人身事故(10)(4/9 ページ)

「人身事故」を真面目に検証するこのシリーズも、いよいよ佳境に入ってきました。最終フェーズとして「人身事故物理シミュレーション」を行っていますが、今回は、このシミュレーションを、より深く理解してもらうための4つの予備知識を説明します。今回もツラいです。それでも、「飛び込み」をなくすには、「飛び込んでから」の痛みを想像できるようになることが重要だと、私は思うのです。

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豚肉を高さ10mから投げてみる

(2)「飛び降り自殺」と「飛び込み自殺」の違いは何か

 今回のシミュレーションを行うに際して、世界中の鉄道への飛び込み自殺の現場の写真と同時に、高所からの飛び降り自殺の現場の写真も数多くレビューしました。そして、この2種類の写真に違和感を覚えながら見続けていたのですが、ようやくその理由が分かりました。

 ―― 飛び降り自殺では、人体がバラバラにならない。

 飛び降り自殺の場合、ほぼ100%、脳漿(のうしょう:脳の内部の空間を満たす液)が流れ出ている状態や脳の骨が破砕されている状態が確認できました。ところが、胴体はもちろん、手足が引きちぎれているような写真は全く見当たらなかったのです。

 『なんでバラバラの状態にならないんだろう』と考え続けていた私は、考えるのを止めて、肉屋に行きました。そして、1kg弱の豚肉*)の塊を購入し、その肉塊を自宅のベランダから10m下の道に向けて投げ落とす、という実験をしたのです。

*)なぜ豚肉にしたかというと、豚肉と人間の肉は構造が似ているという話をどっかで聞いたことがあったからです。

 実験の様子は以下の通りです(次女が撮影を担当しました)。

豚肉を投げる実験の様子


右が投下前、左が投下後

 この肉塊は、秒速14m(時速50km)で地面に激突したハズなのですが、バラバラになるどころか、ほとんど元の形状を維持していました。

 なお、この実験の直後に、私は、この肉を家族全員にポークステーキとしてふるまいました。10mの高さから落とされたその肉の塊は、ほどよく柔らかくなっており、好評でした。「霜降りステーキ」ならぬ「飛び降りステーキ」と命名しました。

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