米FTCが独禁法違反の疑いでQualcommを提訴:また新たな係争に発展
米連邦取引委員会(FTC)が、ベースバンドプロセッサにおける独占禁止法違反の疑いでQualcommを提訴した。
米FTCがQualcommを提訴
米連邦取引委員会(FTC)は2017年1月17日(現地時間)、ベースバンドプロセッサの不公正なライセンス供与に対する裁判所命令を求めて、Qualcommを提訴した。他にも、同社が「2011年から2016年まで、AppleがQualcommの競合先からベースバンドプロセッサを調達するのを妨げていた」ことなど、いくつかの申し立てが含まれている。
FTCは、Qualcommが“ノーライセンス、ノーチップ”の方針を維持していたと訴えている。つまり、Qualcommは携帯電話機メーカーに対し、同社からベースバンドプロセッサの供給を受けるというライセンス条件に同意するよう求めていたというのだ。その上、Qualcommは規格に不可欠な特許ライセンスを競合先に与えることを拒んでいたとFTCは主張している。
FTCは訴えの中で「Qualcommは携帯電話機メーカーに対して独自の販売条件を突き付けていた。具体的には、別の特許ライセンスの取得を要求したり、競合先の部品を搭載した携帯電話機にはロイヤルティーの支払いを求めたりしていた」と主張している。
Qualcommは2016年12月にも、不公正なライセンス供与を行ったとして、韓国の公正取引委員会(KFTC)から1兆300億ウォン(約10億米ドルに相当)の制裁金支払いを命じられていた。それから1カ月もたたないうちに、FTCからも提訴されたことになる。
KTFCは、Qualcommが規格に不可欠な特許ライセンスを競合先に供与するのを拒んだことと、不公正な条件への同意を顧客に強要したことについても、同等の制裁金を科した。不公正な条件には、「顧客の所有する特許をQualcommに無償で提供すること」まで含まれていたという。
Qualcommは上告する予定
Qualcommはいずれのケースでも上告する予定であることを明らかにした。同社はFTCからの提訴について、“政治的な日和見主義の動き”であり、事実を読み違えている上に不完全な法理論に基づいていると主張した。Qualcommは報道発表資料の中で「当社が携帯電話機メーカーに対して、チップの供給を抑えることを目的に、不公正あるいは不合理なライセンス供与条件に合意するよう脅したことは一度もない」と反論した。
Qualcommの顧問であるDon Rosenberg氏は「FTCの決断は非常に残念だが、FTC会長であるEdith Ramirez氏の離任と新政権への移行の直前に提訴を急いだのは、FTCの断固たる決別の表れといえる」と述べた。
FTC委員のMaureen Ohlhausen氏は提訴に反対票を投じたものの、結果的には賛成2:反対1で提訴が決まったようだ。Ohlhausen氏は提訴に反対するコメントの中で、「この決定は不完全な法理論に基づいている。(中略)提訴は合理的な裏付けや証拠に欠けている上、トランプ新政権への移行直前に決まった。単なる命令であったとしても、アジアなど世界各地で米国の知的所有権を弱体化する可能性がある」と述べていた。
FTCは訴えの中で、Appleが2016年、「iPhone 7」にIntel製のベースバンドプロセッサを採用し始めたことにも言及した*)。
*)関連記事:「iPhone 7 Plus」を分解
FTCは「Samsung ElectronicsとHuaweiは最近、それぞれのスマートフォンに自社のLTE対応ベースバンドプロセッサを搭載しているが、そのことはQualcommにとって商業的な面では大きな脅威にはならない」とも述べている。
スマートフォン向けベースバンドプロセッサの市場規模は2015年の時点で13億個に上る。市場調査会社であるForward Conceptsによれば、Qualcommは57%のシェアを握っていた。続いてMediaTekが25%、Spreadtrum Communicationsが6%となっている。Samsungは3%で、Huaweiは2%だという。
Qualcommは、中国のスマートフォン市場において独占禁止法に違反したとして調査を受けていたが、2015年2月、9億7500万米ドルの罰金を支払うことで合意している。さらに、中国でのライセンス料も低減した。
【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】
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