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NVIDIAがエネルギー効率の高い相互接続技術を解説(後編):福田昭のデバイス通信(100) 高性能コンピューティングの相互接続技術(5)(2/2 ページ)
相互接続(インターコネクト)に電荷再利用型バス(Charge Recycling Bus)を利用すると、エネルギー効率を高めることができる。だが、電荷再利用型バスにも弱点は存在する。今回は、電荷再利用型バスの課題とそれを解決する技術を紹介しよう。
伝送路をツイストさせて電流をバランスさせる
BCRB技術では、信号伝送路を周期的にツイストさせる。具体的には、上のバスにレイアウトされていた伝送路と、下のバスにレイアウトされていた伝送路が入れ換わる。この入れ換わりによって上下のバスで電流を均等に保つ。従って中間電位は電源電圧と接地電圧の中央で安定化し、疑似的に電源電圧の役割りを果たせるようになる。
BCRB(Balanced Charge Recycling Bus:バランス型電荷再利用バス)技術の概要。上下のバスで伝送路を入れ換える直前にはクロック動作のセンスアンプを配置した。出典:NVIDIA(クリックで拡大)
ただし、BCRBにも問題がいくつかある。中間電位の配線は電源配線と同様に太くかつ厚くしなければならず、製造コストを増加させる。また信号伝送路の配線容量は、上下のバスで等しくしておく必要がある。そして電圧安定化用に、大容量のバイパスキャパシターを設けておかなければならない。
クロストークによるスキューの累積をキャンセル
電荷再利用型バスには、別の問題もある。スイッチング波形のスキューがクロストークによって伝送距離が伸びるとともに悪化していくのだ。そこで平行する配線で信号の伝送方向を逆向きにすることで、クロストークによるスキューの累積をキャンセルする。
(次回に続く)
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