Qualcommへの圧力が強まるスマホ市場:FTCに続きAppleも提訴に踏み切る(2/2 ページ)
FTC(米国連邦取引委員会)が独占禁止法の疑いでQualcommを提訴した直後、今度はAppleがQualcommを提訴した。Qualcommは米国だけでなく、中国や韓国でもロイヤリティーなどをめぐる問題で訴えを起こされている。飽和しつつあるスマートフォン市場で独占的な地位を築いているQualcommに対し、風当たりが強くなっているようだ。
飽和に近づくスマホ市場
法廷措置には何年もかかる上、最終的に両社の勝敗の決定には至らない可能性もある。はっきりいえるのは、半導体業界にはもはや多額のロイヤルティーを支払うだけの余裕がないということだ。
米国の市場調査会社であるGartnerは、「2017年のスマートフォン市場の成長率は、過去最低となる4.8%にとどまる見通しだ。最も成長が期待されるのは、ミッドレンジおよびローエンドの価格帯の機種になる」と予測している。米調査会社IHSは、「世界最大で最も急速に成長している中国市場では2016年、国内メーカーのスマートフォンの売り上げが大きく伸び、Appleのシェアが約5%減少する」と予想していた。
筆者はAppleを非難したり、今回報道された訴訟についてとやかく言ったりするつもりはない。これらの訴訟は、実際に何があったかはほとんど明らかにされないまま完了すると思われる。FTCの訴状を精査すると、何カ所か訂正されている部分があることが分かる。
筆者は、好景気であればAppleはこの訴訟を起こさなかっただろうと考えている。半導体業界は今、厳しい状況にあり、苦渋の決断を求められる非常に困難な時代の始まりに立っている。
スマートフォンは、半導体業界のけん引力となる製品の1つだったが、その役割も終わりを迎えようとしている。
Gartnerによると、2017年の半導体市場に占めるスマートフォン向けチップのシェアは25.4%で、2018年には売上高が977億米ドルに達し、ピークを迎えると予想されるという。これは、スマートフォン向けチップは終わりに近づいている前兆であり、モバイル市場に投資してきたサプライチェーンにとっての警告でもある。
スマートフォンは、IoT(Internet of Things)市場へとつながるたくさんの技術を生み出した素晴らしい製品だ。AppleやQualcommをはじめ、スマートフォンという市場セグメントを築いた多くの企業は称賛に値する。そしてそれらの企業は過去何年間かにわたり、この市場から多くの利益を得てきた。
その彼らが今、“最後の甘い汁”を吸うために争っている。人々の興味をそそる一方で、醜い争いでもある。
【翻訳:滝本麻貴、田中留美、編集:EE Times Japan】
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