EVモーター制御の専用回路を開発、CPU負荷軽減:ルネサスがISSCCで発表(2/2 ページ)
ルネサス エレクトロニクスは、車載用マイコン向けのモーター制御専用回路技術「IMTS(Intelligent Motor Timer System)」を開発した。フィールド指向制御演算の処理を高速で実行し、CPUの負荷も大幅に軽減することができる。
コストを抑え機能安全にも対応
車載用マイコンでは、機能安全への対応も不可欠となる。今回のマイコンに搭載されるCPUコアは、LSDC(ロックステップデュアルコア)技術を採用している。このCPUコアで、IMTS回路の内部を定期的に監視する方式とした。このため、機能安全のために別途、システムの二重化をする必要はなく、コストを抑えつつ高速制御と機能安全への対応を可能とした。
モーター制御時にはCPUへの負荷がほとんどなく、機能安全を担保する際に2.4%の負荷がかかるという。モーター制御をソフトウェア処理していた時に比べてCPUの負荷が軽減される分、その処理能力を先進ソフトウェアの処理に割り当てることができる。
開発したIMTSには、取り付け位置などで生じる外部センサーの誤差をリアルタイムに補正できる回路技術が搭載されている。この機能はユーザープログラムによって構成することができる。これらの補正機能は、IMTSで自律的に行われる。このため、CPUに負荷をかけることなく、より高精度な演算処理を行うことができるという。
同社はこれまで、EV向けソリューションとして、LSDC搭載CPUやモータータイマー回路、モーターベクトル制御回路などを開発し、供給してきた。新たにIMTSをEV向けソリューションIPとして追加、新型モーターへの対応も含めて、オープン化による普及拡大を目指す。
今回の技術は、車載用マイコンを主な用途して発表したが、多関節の産業用ロボットやドローンなど、複数のモーターを搭載したシステムにも適用できるという。
なお、今回の研究成果は、米国サンフランシスコで開催中の「国際固体素子回路学会(ISSCC 2017)」で、現地時間2017年2月6日に発表した。
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