導電性高分子を用いた熱電変換素子、50枚でLED点灯:nano tech 2017
産業技術総合研究所(産総研)は、「nano tech 2017」で導電性高分子「PEDOT:PSS」を用いた小型有機熱電モジュールの試作品を展示した。試作品は大きな出力密度を達成している。
身近な熱で発電、高性能モジュールを試作
産業技術総合研究所(産総研)は、「nano tech 2017 国際ナノテクノロジー総合展・技術会議」(2017年2月15〜17日、東京ビッグサイト)で、導電性高分子「PEDOT:PSS」を用いた小型有機熱電モジュールの試作品を展示した。温度差50℃で24μW/cm2の出力密度を達成した。
産総研はこれまで、導電性高分子の中で誘電性が最も高いPEDOT:PSSに着目し、研究を行ってきた。この中で、成膜形成プロセスを最適化することによって、有機導電性高分子PEDOT:PSS薄膜の導電性を向上させ、極めて高い熱電変換性能を実現してきた。
「これまでの無機材料に比べると、有機導電性高分子材料は、低温のスクリーン印刷技術で安価に素子を形成することができる。大面積化も容易であり、実用性の高い熱電材料である」(説明員)と話す。4年前に開発した熱電モジュールは、300枚の熱電変換素子を利用して発電し、それを昇圧してLEDを点灯させた。新たに開発した熱電モジュールは発電効率の向上などから、50枚の小型熱電変換素子でLEDを点灯できたという。
研究成果について産総研では、工場などからの排熱回収や中低温の未利用熱を回収してセンサー用電源などに再利用する用途などを想定している。今後は、「PEDOT:PSSの熱電変換性能をさらに高め、温度差が10℃程度でも十分な出力密度が得られるような材料の開発などを行っていく」(説明員)計画である。
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