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成熟Bluetoothチップ市場に吹く新風この10年で起こったこと、次の10年で起こること(13)(1/4 ページ)

世界の至るところで使われるようになった無線技術「Bluetooth」。機器分解を手掛ける筆者も週に2機種のペースでBluetooth搭載機器を分解している。そうした機器解剖を通じて見えてきたBluetoothチップ業界の意外な最新トレンドを紹介しよう。

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欧州メーカーからの突然の通達


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 筆者が代表を務めるテカナリエでは2016年夏、欧州に本社を置く某メーカーから依頼を受けてボードの開発に関与した。実際のボード回路を作成しBOM(部品表)を作成し、試作まで行った。設計した回路、システムにはほぼ問題がなかったので、量産する製造委託先のメドも立てていた。しかし、結論から言えば量産は欧州側の意向により、中国で行うことになってしまった。


 日本は遅いから。

 理由は明確であった。反論しようもない。日本は遅い。それが世界の定説になりつつある……。


広く普及した無線技術「Bluetooth」

 テカナリエではさまざまなBluetoothを搭載した電子機器を購入して、ほぼ週に2機種のペースで機器分解を行っている。Bluetoothは1990年代に生まれた通信技術で新しい技術ではないが、2つの契機を経てわれわれの日常生活には欠かせない通信の1つになった(初期に比べると各段と性能も電力も良くなっている!)。


写真はイメージです

 Bluetoothがここまで広範な普及に至ったのはやはり携帯電話機、スマートフォンのサブ通信として採用されたことに起点があるだろう。オーディオ用ヘッドフォンやPC用マウスなどにもBluetoothが使われてはいたが、やはり2007年に発売された初代iPhoneにBluetoothが搭載されたことは大きな出来事であった。“Bluetoothの搭載”がスマートフォンの定義の1つになった。

 スマートフォンはその後、iOS、Androidに関わらず、Bluetoothをメインのローカル通信として実装している。全てのスマートフォンが共通して持つデバイスの1つである。多くはBluetoothだけでなくWi-Fiも備え、コンボチップと呼ばれる1つのチップでBluetoothとWi-Fiの両機能を備えるデバイスを用いている。多くは米国のBroadcom(ブロードコム)やQualcomm(クアルコム)、台湾のMediaTek(メディアテック)のコンボチップを用いている。スマートフォンの標準装備こそがBluetoothの大開花の起点となった。

 一方でBluetoothの普及はスマートフォンにつながる側でも続々と広がっていく。Bluetoothはリモコンとして、音楽転送手段として、車内通信として、使われた。ホストとしてスマートフォンがあり、そのデータを無線でつなぐ。Bluetoothスピーカー、Bluetooth搭載ウェアラブル端末などの製品が次々と生みだされ、スマートフォンのAdditional(アディショナル)機器として、スマートフォンと対で使われる市場を生み出した。

IoTの無線としても……

 2つ目のBluetoothが広く普及した契機は、途上であるが、IoT(モノのインターネット)である。文字通りインターネットへの接続を定義とする。そのために無線、有線を問わずデータのやりとりが必須になってきた。IoTはセンサーのデータを集めるという定義がある(必ずしもセンサーデータの収集はIoTの主ではないが)。センサーのデータや情報、アクションデータをクラウド(もしくはローカルホスト)に送るという場合にもっとも簡易な方法がスマートフォンを介すことである。スマートフォンはどこにでもある、もっとも身近でコモディティな通信機器であるからだ。そこでIoTの端末側の多くはBluetoothを用いることになる。ビーコン(Beacon)やタグ(Finder)などはほとんどがBluetooth搭載である。

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