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成熟Bluetoothチップ市場に吹く新風この10年で起こったこと、次の10年で起こること(13)(4/4 ページ)

世界の至るところで使われるようになった無線技術「Bluetooth」。機器分解を手掛ける筆者も週に2機種のペースでBluetooth搭載機器を分解している。そうした機器解剖を通じて見えてきたBluetoothチップ業界の意外な最新トレンドを紹介しよう。

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Dialogの採用が増えている理由

 なぜ、DialogはBluetoothチップの採用をジワジワと広げているのか。理由はいくつかあるだろう。まず、電源ICでの高い実績。Bluetoothチップとしての仕様の最適性……。加えてDialogには技術面だけは語り切れないプラスαの魅力が備わっているようだ。図5は、Dialogが開示している電源IC製品の資料の一部である。


図5:機能を格段に上げ、チップを大きくしている (クリックで拡大) 出典:テカナリエレポート

 通常半導体などの部品は微細プロセスなどを用い、チップ面積を小さくする傾向にある。しかしDialogはこの10年で大幅にチップ面積を広げている。そして、Dialogチップを採用する社数も増えている。つまりDialogはこの10年間でシリコンの消費量を極端に増やしているわけだ。

 たくさんの面積を使い、たくさん売る。多くの半導体メーカーの目指す理想の1つを遂げている。そして、Bluetoothチップで先行するNordicに、新参モノとしてチャレンジする……。その極意は一体何か? 速さという能力を持っているからに他ならない。Dialogは極めて速い会社の1つなのだ。だからこそ電源ICでも図3のような市場を形成させたのだ。

“速さ”とは一体、何なのか

 次回は、この“速さ”とは一体、何なのかを、彼らDialogの精神性の一部を実例を挙げて示したい。チップ上に描かれるシリコン文字やシリコンアートから見えるものを実例として。冒頭で「日本は遅いから」とわれわれはボード製造ビジネスを失った話をした。日本は遅いという実態もあるが、実態以上に悪印象だけが広がってしまうことは致命傷になりかねない。さまざまな角度から“速さ”について考えていきたい。

「この10年で起こったこと、次の10年で起こること」連載バックナンバーは、こちら

筆者Profile

清水洋治(しみず ひろはる)/技術コンサルタント

 ルネサス エレクトロニクスや米国のスタートアップなど半導体メーカーにて2015年まで30年間にわたって半導体開発やマーケット活動に従事した。さまざまな応用の中で求められる半導体について、豊富な知見と経験を持っている。現在は、半導体、基板および、それらを搭載する電気製品、工業製品、装置類などの調査・解析、修復・再生などを手掛けるテカナリエの代表取締役兼上席アナリスト。テカナリエは設計コンサルタントや人材育成なども行っている。


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