NEDO理事長が語る、2017年度に注力する3つのこと:AIやロボット分野への投資を強化
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、2017年度の事業における注目点を説明した。「人工知能」「ロボット・ドローン」「中小・ベンチャー支援」の3つとなる。
AIやロボット分野への投資を積極的に
人工知能(AI)、ロボットへの投資を積極的に増やす――。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)理事長の古川一夫氏は2017年3月8日、2017年度のNEDOの事業における注目点について記者説明会を行った。古川氏が、2017年度の注目テーマとして挙げたのは「人工知能」「ロボット・ドローン」「中小・ベンチャー支援」の3つだ。
1つ目の人工知能では、2015〜2019年度にかけて行う事業「次世代人工知能・ロボット中核技術開発」を紹介した。同事業では、AI技術とロボット要素技術の融合を産学連携で目指す。AI技術の国際競争力強化を図るため、産業技術総合研究所 人工知能研究センサー(AIRC)を拠点として、大学や企業から国内外の英知を結集するという。
プロジェクトリーダーにはAIRC研究センター長の辻井潤一氏、プロジェクトマネジャーにはNEDOのロボット・AI部統括研究員である関根久氏が就任した。2016年度の予算が30.6億円なのに対して、2017年度の予算案額は45億円へと増加している。
2つ目のロボット・ドローンでは、2017年度から新しく始まる「ロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクト」(2017〜2021年度)を紹介した。物流、インフラ点検分野で活用が期待されるドローン、古川氏は「材料の軽量化やバッテリーの性能向上が進むが、どのように社会実装するかなど課題も多い」と語る。
同プロジェクトでは「東京ドーム5倍の面積」(古川氏)という福島県南相馬市に整備された「ロボットテストフィールド」で、性能を定量的に評価するための基準策定や、運行管理システムなどの開発を行うという。予算案額は33億円である。
大企業とベンチャーの連携を支援するSCA
3つ目は、中小・ベンチャー支援である。古川氏は、Financial Timesの世界トップ500社に入る企業の会社数、設立年度のデータから米国と日本との違いについて指摘した。トップ500社のうち、米国が計208社を占めたのに対して、日本はわずか計35社。その中で1980年以降に設立した企業は米国43社で、日本は3社となっている。
2015年におけるベンチャーキャピタル(VC)による投資額も、米国が約6.7兆円なのに対して日本は約0.1兆円だ。そこには約70倍の差があり、古川氏は「ベンチャーを育成する環境は米国が圧倒的に高いが、甘んじてはいけない。経済産業省も予算を増やしているため、日本版のベンチャーエコシステム構築に取り組んでいく」と語る。
NEDOでは、技術シーズの発掘から事業化までを政策的に推進する「研究開発型ベンチャー支援事業」(2014〜2018年度)に取り組んでいる。2016年度の補正予算額は7億円なのに対して、2017年度の予算案額は15億円と2倍以上に増加した。これから起業する人向けや、資金調達を目指すベンチャー向けなどフェーズごとに支援の方法が分かれている(詳細は上記図)。古川氏が強調したのは、企業間連携スタートアップに対する事業化支援「SCA(Startups in Corporate Alliance)」である。
SCAは、大企業とベンチャーの連携を支援する枠組みとなる。日本ではベンチャーの新規株式公開(IPO)はみられるが、大企業がM&Aするケースは多くない。古川氏は「米国はM&Aが着地点として尊敬されているが、日本では抵抗感があるようだ。M&Aで規模を大きくする、得た資金で新たな事業を始めることにも意味があるのではないか。NEDOでは、SCAを通して大企業とベンチャーのマッチングを支援していく」と語る。
2017年3月7日には、SCAにおける交付決定事業者が公表された。申請のあった72件について厳正な審査が行われ、採択12件および補欠1件が決定したという。交付決定事業者には、2018年2月末までに最大7000万円の助成が行われる予定である。
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