ソフトバンク、ARM株式の25%をファンドに売却か:アブダビの出資確保が狙い?
Financial Timesによると、ソフトバンクが、ARMの株式の25%(約80億米ドルに相当)を、ソフトバンクが設立するファンドに売却する計画だという。アラブ首長国連邦アブダビ政府系の投資グループであるMubadalaから、同ファンドへの出資を確保することが狙いだとFinancial Timesは報じている。
ARM株式の25%を売却か
Financial Timesは2017年3月8日(米国時間)、ソフトバンクが、ARMの株式の25%(約80億米ドルに相当)を、ソフトバンクが設立するファンドに売却する計画だと報じた。ソフトバンクは2016年9月、ARMの買収を完了したばかりである。
ソフトバンクは2016年10月、テクノロジー分野へ出資することを目的に「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」(仮称)を設立すると発表した。同ファンドへの出資を目的に大手投資家たちと協議中のため、ソフトバンク・ビジョン・ファンドの総額は1000億米ドル(約10兆円)の規模になる可能性があるとしている。
ソフトバンクは今後5年間で少なくとも250億米ドル(約2.6兆円)を同ファンドに出資する予定だが、現時点で最大の出資者はサウジアラビアのPublic Investment Fund(PIF)である。PIFは、今後5年間で最大450億米ドル(約4.7兆円)を出資する可能性がある。この成果は、ソフトバンク社長の孫正義氏と、PIFのチェアマンでサウジアラビアの副皇太子でもあるMohammed bin Salman氏の長年の交渉によるものだ。
ARMの株式の売却は、アラブ首長国連邦のアブダビ政府系投資グループであるMubadalaからの出資を確保するためだとみられる。
Financial Timesによれば、ソフトバンク・ビジョン・ファンドの目標額である1000億米ドルを達成すべく、孫氏は、Mubadalaの出資を確実なものとしたかったようだ。ソフトバンクとMubadalaは、Mubadalaが150億米ドルを出資することで合意しつつあるという。
ソフトバンク・ビジョン・ファンドには、AppleやQualcomm、Foxconn、Oracleの創設者であるLarry Ellison氏も、金額の規模は比較的小さいが、投資すると報じられている。
同ファンドが目標としている規模はあまりにも大きいため、金融業界や技術コミュニティーからの監視の目が厳しくなる可能性がある。Financial Timesは、このファンドの金額は、「過去30年間に、米国のベンチャーキャピタルが出資した金額の合計に相当する」としている。
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