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まだ初期段階の産業用IoT、大きく発展する可能性MWC 2017で活発に議論

「Mobile World Congress(MWC) 2017」では、5G(第5世代移動通信)だけでなく、産業用IoT(モノのインターネット)についても活発な議論が行われた。

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「IoTのメリットを理解する」ことが重要に

 2017年2月27日〜3月2日にスペインバルセロナで開催された「Mobile World Congress(MWC) 2017」のパネルディスカッションでは、産業用IoT(モノのインターネット)の知的活用について活発な議論が交わされた。現在の試算では、産業用IoTに数億米ドルを投資した企業は確実にその効果を得ることができ、資産換算すれば1米ドルの投資が3米ドルのリターンをもたらすという。

 Uptakeの創設者でCEO(最高経営責任者)を務めるBrad Keywell氏は、「コネクテッド産業デバイスで収集したデータから得られる“予測的な洞察(predictive insights)”は、利益を創出する大きな機会をもたらすとともに、これまでにない生産性や信頼性、安全性を生み出すことができる。ただしそれは、業界が、コネクテッドデバイスのメリットを活用する方法を理解している場合に限る」と述べている。


UptakeのCEOであるBrad Keywell氏

 McKinsey & Companyの社長で、産業向けIoTの可能性を議論する2つのパネルディスカッションの司会を務めたVenkat Atluri氏は、産業向けIoTが今後10年間で、資産ベースで4兆米ドルの価値を生み出すことを示す統計を披露した。この額は、日本の年間GDP(国内総生産)に等しい。

 Atluri氏はさらに、「産業向けIoTを活用可能な全ての企業が同ソリューションを導入した場合、この4倍の価値を創出できる」と付け加えた。ただし、Trimble Technologiesで技術イノベーション担当バイスプレジデントを務めるDoug Brent氏は、「Keywell氏の予測を実現できるようなビジネスモデルは、ごく初期の段階にある」と指摘している。

 効率を高めるためにIoTを活用するという取り組みを効果的に進める1つの鍵は、より多くの機器と企業、人を相互につなげて、データを共有および相互運用することにある。

 OSIsoftでコネクテッドサービス担当プリンシパルを務めるEnrique Herrera氏は、「企業が、産業プロセスおけるコンスタントなデータフローによって生成される“予測的な洞察”に対応できるようになるには、柔軟で素早い対応が鍵になる。だが、設備を購入して20〜30年間稼働させることに慣れている企業にとって、柔軟な対応は難しい」と説明している。


OSIsoftのEnrique Herrera氏

 UptakeのKeywell氏が言うように、データサイエンスは実際に、3〜6カ月かかる徹底した分析時間を飛躍的に短縮できる。Keywell氏は、「3日でデータサイエンスモデルを展開することができる」と述べている。

 同氏は、産業用IoTの効果的な活用に向けた鍵として、「予測的な洞察を作成する。そして、産業環境の中でアクションを起こすべき人に伝える」という2つの文に要約して説明している。

 一方、Trimble TechnologiesのBrent氏は、「1つ目は、たくさんのセンサーからデータを収集する。2つ目は、分析を重ねてデータを理解する。3つ目は、アクションを起こすことだ」と説明している。

 Herrera氏は、「業界によっては、(IoTを活用するには)これまでの文化を変える必要もあるだろう」と指摘した。Herrera氏は、とりわけ若い世代の、データ収集に対する認識について懸念を示す。「彼らはデータがどのように集められ、どのように使われるのかをまるで気に掛けていない」(同氏)

 パネリストの間でも、最も大きな懸念はデータのセキュリティについてだった。パネリストの1人で、農業用機械を製造するJohn Deereでマネジャーを務めるThomas Engel氏は、John Deereの新しいマシンは定期的に情報を同社のアナリストに送ってくる、と話す。「トラクターを使う農業従事者は、マシンが“情報”を送ること自体は特に気にしていない。だが、その情報が、農地などをどのように使っているかや収入など、より個人的なものになると、当然だがそれらの情報を利用されることには抵抗を感じている」(Engel氏)

 Engel氏は「情報の所有者はユーザーだ。もしそれを共有するというなら、それはユーザー自身の判断である。私たちは無理に情報を取り込もうとはしない」と述べた。

 マシンデータを人々の間でうまく共有することは、業界に大きなインパクトを与える。Engel氏は、「データの生成、収集の次のステップは分析である。気象の変化に大きく影響される農業において、データを解析して活用することは、より安定した農業を長く続けることに役立つだろう」と強調した。

【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】

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