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Uberの自動運転車がアリゾナ州で横転事故浮上する幾つもの疑問(2/2 ページ)

Uberの自動運転車が横転する事故が発生した。数々の疑問が浮かんでくるが、それを解明するにはUber側が、事故当時のデータを、さらに開示するのを待つ必要があるだろう。

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浮上する幾つもの疑問

 今回は、人間が運転する自動車によって引き起こされた事故として処理するのが理にかなっているようだ。ただし、これを自動運転車の推進者らが確約した安全性という観点から見た場合、「Uberの自動運転車は、衝突防止センサーを搭載しているにもかかわらず、注意散漫な人間のドライバーが運転する自動車に対して事故を防げなかった」ということが実証されてしまったのではないか。

 疑問は幾つも浮かんでくる。

 Magney氏は、「衝突した自動車は既に、違反走行車両として責任を問われていることから、テンペ警察は、これ以上調査する必要がないと考えられる」と述べている。

 しかし同氏は、「両方の車両の速度については、検証する必要がある。今回の事故は、都会の大通りで発生しているため、どちらの自動車もそれほど速度を出していなかったはずだ。にもかかわらず、SUVが横倒しになるほどの激しい衝突だった」と指摘する。

 下図の通り、Uberの自動運転車は7つのカメラを搭載し、360度のレーダー探知範囲を確保する。最上部に取り付けられたライダーは、周囲の環境を360度、3次元でスキャンすることが可能だ。


Uberの自動車が搭載している検知システム(クリックで拡大)

 このUber車には、今回の事故を防止できるような安全装置は搭載されていなかったのだろうか。

 Magney氏は、「通常であれば、搭載していると言うことができる。しかし、今回の事故のように、考え得るシナリオの数は無限にある。自動運転車の対応としては、完全に危険を回避するというよりは、軽減するという程度に限定されるだろう」と述べている。

 同氏は、「(上図に示されている)全てのセンサーが作動し、カメラやライダー、レーダーを全部使って、他の自動車の位置や自らの軌跡を追跡することができる」と主張する。

 また、「原則として、自動運転車システムは、可能な限り多くのシナリオに接する必要がある。しかし、今回の事故の状況からも分かるように、こうしたシナリオの中には、シミュレーションでしか実行できないものもある」と付け加えた。

 さらにMagney氏は、「米運輸省道路交通安全局(NHTSA)が、HAV(Highly Automated Vehicles)に関するガイドラインの中で主張しているように、HAVには、予期せぬ事態への対処方法について説明する、OEDR(Object and Event Detection and Response:対象物体と事象の検出と対応)が不可欠だ」と指摘する。

 また、Uber車が今回、衝突防止のために何らかの措置を講じたのかどうかという点もはっきりしていない。Magney氏は、「衝突が起こる可能性について、どの程度まで把握できたのかを確認する必要がある」と述べる。

 さらに重要な疑問がある。

 自動運転車が、事故を防止することが可能な運転方法を学習するためには、Uber車のように各種センサーを搭載することが、優れたソリューションとされるのだろうか。こうした方法により、事故を防ぐことができるのだろうか。また、既存のディープラーニング(深層学習)技術は、自動運転車に運転方法を教えることが可能な段階にあるのだろうか。

 Mobileyeの共同創設者でありCTO(最高技術責任者)を務めるAmnon Shashua氏は、「人間のドライバーは、主に身振りによる合図で他の道路ユーザーとやりとりすることで、対処方法を前もって考える。つまり、道を譲ったり譲られたりする“要望”をハンドル操作やブレーキ、加速などを介して、他の自動車や歩行者に伝えているということだ。Mobileyeは、このような交渉の仕方を『運転方法』とみなし、自動運転車が、人間が運転する自動車と道路を共有する上で、学習しなければならないスキルの1つであると考えている」と、度々主張してきた。

 Uber車が巻き込まれたとされる今回の衝突事故は、機械が他の道路ユーザーと交渉することに失敗した、典型例といえるのだろうか。それとも単に、人間のドライバーによる無謀な運転の結果として起こった事故なのだろうか。

 疑問はまだある。横転したUberの自動運転車に乗っていた操作担当者は、運転を“引き継ぐ”ことに失敗したのだろうか。つまり、マニュアルの運転に切り替えることはできなかったのだろうか。

 事故の発生前後でUberの自動運転車が実際にどのような挙動をしたのかは、Uber側がさらに情報を公開するまで分からないだろう。

 Magney氏は楽観的だ。「Uberは大量のデータを収集しており、これらを精査しているはずだ。Uberの自動運転車には、(上記で述べたような)多くの疑問に十分答えられるくらいのセンサーやカメラが搭載されている」(Magney氏)

 ただし、果たしてUberが収集したデータを公開するのだろうか。これはもう1つの疑問である。

【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】

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