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「われわれのAIは現実世界のモノを動かすための技術」、ルネサス呉文精氏

ルネサス エレクトロニクスが、プライベートイベント「Renesas DevCon Japan 2017」を2年半ぶりに開催した。社長の呉文精氏は、エンドポイントにAI(人工知能)を組み込む「e-AI」に注力するという強いメッセージを放った。

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エンドポイントにインテリジェンスを組み込む「e-AI」

 ルネサス エレクトロニクスは2017年4月11日、プライベートイベント「Renesas DevCon Japan 2017」を東京都港区の「ザ・プリンス パークタワー東京」で開催した。ルネサスが国内で初めてDevConを開催したのは2014年9月のことだ。その後、米国や中国などで開催し、2年半を経て再び国内での開催となった。

 さらに今回のDevConの基調講演には、ルネサスが2017年2月24日(米国時間)に買収を完了したばかりのIntersilから、同社CEO兼プレジデントもNecip Sayiner氏も登壇した。Sayiner氏は2月24日付でルネサス エレクトロニクス執行役員常務に就任している。

 今回のDevConにおいて、ルネサスが最も強調したのは「e-AI(embedded-AI)」である。e-AIとは、IoT(モノのインターネット)のエンドポイントにAI(人工知能)を組み込むことだ。その目的は、エンドポイントで生成される膨大なデータを、クラウドに上げる前にある程度処理することである。

左=ルネサスが提唱する「e-AI」の概要。センサーなどから生成される膨大な量のデータをエンドポイントのAIで処理する(統計処理する)というコンセプト/これによって反応時間が2桁違うなど、リアルタイム性に大幅な違いが出てくる(クリックで拡大) 出典:ルネサス

 この考え方自体は目新しくはなく、「エッジコンピューティング」とも呼ばれているが、ルネサス社長の呉文精氏は、「“エッジ”というと、必ずしもエンドポイントを指すわけではなく、(エンドポイントからクラウドまでの流れの)どこで区切るかによって、“エッジ”を指す場所が異なる場合もある。クラウドの一歩手前のフォグを“エッジ”と呼ぶケースもある。われわれが提唱するe-AIは、工場の装置など、明確にエンドポイントでの処理を指す」と説明する。

“現実世界のモノを動かすためのAI”


ルネサス社長の呉文精氏

 呉氏は「現在、AIというと、VR(仮想現実)のゲームなど、非日常的な世界を実現するための分野で話題になることが多い。ただ、われわれが取り組むe-AIというのは、現実世界でモノを動かすためのシステムである。そのため、絶対的な安全性がより重要になってくる。それを実現できるかどうか、そこが、ルネサスが戦っていく場所であり、推し進めていくところである」と強調する。

 呉氏は、e-AIに求められる要素として、「リアルタイム制御」「安全性」「セキュリティ」「低消費電力」を挙げる。この中でも、特に低消費電力の点でIntersilとの相乗効果が望めそうだ。

 IntersilのSayiner氏は、「われわれが強みとして持っている技術がパワーマネジメントだ。自動車でも産業機器でも、エンドポイントには必ずパワーマネジメントが必要になる。例えば、ルネサスの車載情報システム向けSoC(System on Chip)『R-Car』などのデバイスで、さらに効率を上げることができると考えている」と述べる。

マイコン市場は追い風


IntersilのSayiner氏

 呉氏はマイコンの市況について、車載、産業機器、家電のいずれの分野でも極めて強いニーズがあると語る。呉氏によれば、8インチウエハーライン、12インチウエハーラインをフル稼働しても追い付かない状況になっているという。「マイコンが使われる用途も、例えば自動車分野では、ブレーキの踏み間違いを防ぐものだったり、家電分野では、特に中国で進んでいるエアコンのインバーター化だったりする。そのため、スマートフォンなどのように浮き沈みがあるものではなく、安定して強い需要があるものになっている。この強いニーズは今後も続いていくとみている」(呉氏)

 パワーマネジメントIC(PMIC)でも、直近の需要は強いとSayiner氏は付け加える。「当社は、コストというよりも、効率などの性能やサイズの点で、PMICの差異化に注力してきた。それが、需要の強さにつながっている」(Sayiner氏)

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