TSMCがファウンドリー市場の見通しを下方修正:スマホの在庫調整で
スマートフォン市場とPC市場の厳しい在庫調整を受け、TSMCが、ファウンドリー市場の成長見通しを下方修正した。
ファウンドリー市場の成長率を下方修正
TSMCは、AppleやMediaTekを顧客に持つが、「2017年前半はスマートフォン市場で在庫調整が続く」と予想している。
TSMCの共同CEOであるMark Liu氏は、台湾の台北で開催した2017年第1四半期の決算報告会で、「ファブレス半導体企業の平均在庫日数(DOI:Days Of Inventory)は、依然として長い。当社の2017年第2四半期の見通しは、スマートフォン市場とPC市場の厳しい在庫調整を反映している。ファブレス半導体企業のDOIは、2017年第2四半期末ごろに正常に戻る見通しだ」と語った。
TSMCは、メモリー製品の需要が予想を上回っていることを受け、2017年の半導体市場全体の成長率を3%から7%に上方修正した。一方、ファウンドリー市場全体の成長率については、3カ月前に予想した7%から5%に下方修正している。自社の成長率に関しては、5〜10%との予想を変えなかった。
TSMCは、ファウンドリー市場で約半分のシェアを占めている。同社は、「10nm製品の生産を本格化させることで、2017年第2四半期はさらに市場シェアを高めたい」としている。
TSMCは、10nm製品の発売で、ライバル企業であるSamsung Electronicsに約3カ月の後れを取っている。
半導体分野を長年見てきたアナリストであるAndrew Lu氏は、シンガポールの市場調査会社Smartkarma向けに作成したレポートの中で、「TSMCは、Appleの『iPhone 8』(仮称)向けアプリケーションプロセッサ『A11』(仮称)に10nmプロセスを適用することから、2017年後半に10nmチップの売り上げ増を見込んでいる」と述べている。TSMCは、10nmチップは2017年後半の同社の売上高の約10%を占めると予想しているという。
半導体大手の勢力争い
TSMCは、同社の最先端プロセスである16nm/20nm製品では苦戦を強いられている。16nm/20nmチップが同社の総売上高に占める割合は、2016年第4四半期には33%だったが、2017年第1四半期は31%に減少した。2017年第1四半期の通信チップの売上高は、2016年第4四半期と比べて18%減少した。
TSMCは16nm/20nmの世代のプロセスにおいて、Samsungと激しく競い合っている。Samsungは、Qualcommのチップの製造に14nmプロセスを適用している。TSMCは、「2017年後半に16nmプロセス技術をベースとした12nm製品の開発を完了し、提供を開始したい」としている。
TSMCにとって28nmプロセスは“ドル箱”だ。2017年第1四半期において、28nmプロセスの売上高は、TSMC全体の25%を占めたという。2016年第4四半期は24%だった。28nmプロセス市場では、Intelなどの競合他社がTSMCのシェアを奪おうとしているが、TSMCは90%ものシェアを獲得している。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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