エンドユーザータッチという価値で勝負する商社:半導体商社トップインタビュー 菱洋エレクトロ(3/4 ページ)
再編が進み大きく業界地図が塗り変わりつつある半導体業界。半導体を取り扱う半導体商社の経営環境も激変期にある。そこで、EE Times Japanでは各半導体商社の経営トップにインタビューし、今後の成長、生き残り戦略を聞く企画を進めている。今回は、バリュー追求型の商社として成長を目指す菱洋エレクトロの大内孝好社長に聞いた。
ターゲットの1つがIoT
EETJ B2B2Eのビジネスモデルでバリューを提供していく領域としては、どこをターゲットにしていますか。
大内氏 全く新しい顧客を開拓するわけではなく、ある程度、既存の顧客、エコシステムを活用したビジネス展開になる。そのため、われわれのバリューを発揮できる1つの領域がIoTだと考えている。幸いにも主力サプライヤーの方向性とも合致している。IoT領域でのバリュー提供ビジネスが今後の成長の柱になる。
EETJ IoT領域も相当広いですが、どのようにビジネスを展開されますか。
大内氏 もちろんIoTの全てを網羅することは不可能。そこで、将来的なボリュームが望める領域か、ブルーオーシャン(競争が少ない未開拓領域)に絞った上で、今後のIoTビジネスのベースになりそうなPOC(Proof Of Concept/概念実証)をいくつか作っている最中だ。先に挙げた東急テクノシステムとの実証実験で使用する「リアルタイム動画解析クラウドソリューション」などがPOCの一例だ。
IoTへの期待感は変わらず
EETJ IoTビジネスの現状の事業規模は、どれぐらいですか。
大内氏 IoTビジネスと従来の半導体/デバイス事業、ICT/ソリューション事業での売り上げの切り分けなどを行っていないので厳密な算出は難しいが、2017年1月期実績でおおよそ50億円規模と見積もっている。
EETJ 2015年9月に発表時点の2019年1月期を最終年度とする中期経営計画で想定されたIoTビジネス規模と100億円近く乖離(かいり)し、このほど下方修正されました。
大内氏 当初の想定よりも、IoT市場の立ち上がりが遅れたことが計画を下回った要因だ。感覚的に市場の立ち上がりの遅れは2年分ぐらいだ。ただ、IoTビジネスへの期待感は、変わっていない。IoTの広がりを実感し、いくつかのPOC、実モデルもでき、ここ数カ月でビジネスが立ち上がる。2019年1月期にIoTビジネスで売上高120億円の目標をあらためて掲げたが、この修正目標は確実に達成したい。
価値を利益に
EETJ 全社業績計画としては、2019年1月期に売上高1100億円、営業利益26億円、株主資本比率(ROE)2.7%の数値目標を掲げておられます。やはり中長期的には、利益重視の経営となりますか。
大内氏 いずれは営業利益で50億円、ROEで5%を達成しなければと考えている。そのためには粗利率も現状の10%から15%へ引き上げる必要がある。
そうした利益を得るためには、バリューのある付加サービスを強化する必要がある。付加サービスでは粗利率30%程度の価値を認めてもらえるが、物販だけではせいぜい20%がやっとだろう。
EETJ 極端な話ですが、利益重視であれば、物販から撤退するという選択肢もあるかと思いますが。
大内氏 付加サービスを実現するには、物の存在が必ずある。そして、われわれはこれまで物の革新性に関する情報、ノウハウをサプライヤーから得てそれをビジネスの核にして、付加サービスを提供してきた。顧客基盤も半導体/デバイスビジネスで構築してきたもの。半導体/デバイスの販売をやめるとそうした核、基盤を失うことになる。当然、B2B2Eのビジネスモデルも成立しなくなる。
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