外交する人工知能 〜 理想的な国境を、超空間の中に作る:Over the AI ―― AIの向こう側に(10)(4/9 ページ)
今回取り上げる人工知能技術は、「サポートベクターマシン(SVM)」です。サポートベクターマシンがどんな技術なのかは、国境問題を使って考えると実に分かりやすくなります。そこで、「江端がお隣の半島に亡命した場合、“北”と“南”のどちらの国民になるのか」という想定の下、サポートベクターマシンを解説してみます。
絶大な安心感を誇る「サポートベクターマシン」
ここからは後半になります。この連載の後半は、「私の身の回りの出来事」を使った、「数式ゼロ」のAI解説になります。
今回は、前回と同様、機械学習型AI技術の一つであり、深層学習(ディープラーニング(DL))が登場する直前まで、ポストニューラルネットワークの最右翼の地位を独占し続けていた、サポートベクターマシン(Support Vector Machine(SVM))についてお話します。
「『サポートベクターマシン』が“人工知能”なのかどうか」については、今回も『江端AIドクトリン』に基づいて私が勝手に判定しました。
サポートベクターマシンは、学習アルゴリズムや推論結果に至るまでの過程が、説明可能なAI技術です。
これは、ニューラルネットワークが、「何がどう動いていることを追跡することが(ほとんど)不可能」あり、「ひとたび適用に成功すれば恐しい能力を発揮する」が、「適用できなければ全く使えない」という点において決定的に違います。
AI技術の適用の成否はさておき、(個人的な見解ではありますが)内部処理の仕組みが「見える」という点において、サポートベクターマシンは安心感が違います。
話は少し逸れますが、私が常々思っていることに、“「研究員」という生き物は、時として「アイドルの追っかけをやっている中年連中」よりも節操がない”、というものがあります。
「え? まだニューラルネットやっているの? 時代はサポートベクターマシンでしょ」と言っていた当の本人が、「え? まだサポートベクターマシンやっているの? 時代はディープラーニング*)でしょう」などと、しれっと言っていたりするからです。
*)ちなみに「ディープラーニング(深層学習)」とはニューラルネットワークの学習方法のことです。
25年間近く、さまざまな新しい技術に関わる機会を持つことができた私から見ると、ディープラーニングは、まだまだ「ぽっと出のアイドル」の域を出ていません。
そして、これが、実際にそれが単なる私の主観ではないことは、以下のグーグルトレンド(ニュースの見出し数の推移)のグラフを見ていただければ明らかです。
サポートベクターマシンは、ディープラーニングなどの他のAI技術の影響を受けることなく、ここ5年間(AIブームの本格化前から)、評価が安定し続けています。これは本当に驚くべきことで、サポートベクターマシンが、今なお、優れたAI技術として認知されていることを示しています。
さて、そのサポートベクターマシンは以下のような特徴を持つAI技術です。
といっても、よく分からないですよね。私、サポートベクターマシンについてもいろいろな本を読んでみたのですが ―― 内容は理解できていると思うのですが ―― その例題が、実に「つまらん」。
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