ZTE、5Gに向け“プレ基地局”で市場シェア拡大:WTP2017
ZTEは、展示会「ワイヤレス・テクノロジー・パーク 2017」で開発中の5G(第5世代移動通信)対応基地局の展示などを実施した。
Massive MIMOでシェア上昇
2017年5月24日に開幕した「ワイヤレス・テクノロジー・パーク(WTP)2017」(会場:東京ビッグサイト、併催:ワイヤレスジャパン2017、会期:2017年5月26日まで)で、ZTE(中興通訊)は、商用化済みのMassive MIMO(大規模MIMO)対応のLTE基地局や、開発中の5G(第5世代移動通信)基地局の展示し、5G商用化に向けた技術、製品開発が順調に進んでいることをアピールした。
今回が初のWTP出展となったZTEのブースでひときわ目立っているのが、「Pre(プレ)5G」と表示下に置かれた大きな基地局2つだ。この大きな基地局は、TDD―LTE対応基地局とFDD―LTE対応基地局であり、厳密に言えば4G対応基地局になる。しかし、ZTEがこれらの基地局をプレ5Gと称するのは、2020年の商用化が見込まれる5Gに導入される特長的な技術であるMassive MIMO技術を取り入れた基地局だからだ。2.5GHz帯、3.5GHz帯のTDD―LTE基地局は128アンテナ(送受各64ポート)を備える。Band3の周波数帯(上り1710〜1785MHz、下りが1805〜1880MHz)対応FDD-LTE基地局も64アンテナ(同32ポート)を備えたプレ5G仕様だ。いずれも製品化済みで、前者のTDD―LTE基地局は日本国内でも2016年から全国で稼働している。
「プレ5G基地局は、通信容量を6〜8倍に拡張でき、周波数利用効率を大きく改善できる。日本、中国だけでなく世界30カ国以上で商用利用されている。プレ5G基地局の投入で、市場シェアも高めることに成功した」(ZTE ワイヤレス事業部5Gソリューションマネージングディレクター Alex Wang氏)と市場での評判は上々だ。
5Gに向け準備着々
しかし、ZTEが見据えるのは、プレ5Gの先、5Gの時代だ。「プレ5G基地局で、技術力の高いZTEとしてのブランド力を高めた。今後も5G向け技術開発をリードし通信事業者(キャリア)の5Gネットワーク早期展開をサポートする」(Wang氏)と語る。
WTP2017 ZTEブースでは、開発中の5G基地局も展示。28GHz帯、60GHz帯といったいわゆるハイバンド対応基地局(アンテナ素子数256)と、3.5GHz帯、4.5GHzのローバンド対応基地局(同128)を披露した。いずれの基地局も、TDD方式のNR(New Radio)試験に対応した基地局で、Massive MIMOの他、ビームトラッキング、ビームフォーミングといった5Gの要素技術を導入している。
5G基地局でさらにシェア向上を狙うZTEでは「現状は、キャリアを中心にパートナーシップを結び、フィールドテストやシミュレーションを繰り返していくことが重要」(ZTEジャパン ネットワーク事業部 最高マーケティング責任者 Leo Chao氏)とする。
地元中国だけでなく、世界各国のキャリアとさまざまな5G開発プロジェクトを進めているとし、日本ではソフトバンクとの戦略的パートナーシップを結ぶ。ソフトバンク以外の国内大手キャリアについても「定期的な技術交流を行っている」とした。加えて、「5Gでは、URLLC(Ultra-Reliable and Low Latency Communications/超高信頼低遅延)、mMTC(massive Machine Type Communications/大量端末通信)といったIoT(モノのインターネット)に向いた仕様もある。IoTではキャリアだけではなく、さまざまなパートナーと広く提携しエコシステムを構築する必要がある」(Chao氏)とし5G商用化に向けて積極的なパートナー戦略を展開していくとした。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 最初の照準は東京五輪、5G開発を加速する日本勢
本連載では、5G(第5世代移動通信)の開発が進んでいる5つの国/地域に焦点を当て、その最前線をノキアの視点でお届けする。第2回となる今回は日本を取り上げる。2020年の東京オリンピックを控え、5Gの商用化に向けた議論が加速してきている。 - 5Gの規格策定、まだ初期段階
早ければ2017年にも運用試験や一部商用化を実現するという通信事業者(キャリア)の意気込みとはうらはらに、5Gの規格策定作業はまだ初期段階にあるという。 - スマホ台頭の陰で地位を失った“日の丸半導体”
これから10年先の半導体業界はどうなっているのだろうか――。過去10年に起こった半導体業界の変化を、スマートフォンやテレビといったキラーアプリケーションの解剖を通じて探りながら、次の10年のトレンドを連載で探っていく。第1回は、日本の半導体メーカーが世界市場でどのように地位を失っていったのか、その過程を見ていく。 - 5G向け28GHz帯多素子アンテナ/RFモジュール
三菱電機が、5G(第5世代移動通信)基地局向け28GHz帯多素子アンテナ/RFモジュールを開発した。このモジュールの広信号帯域幅は800MHzで、ビームフォーミングは水平±45度。同一周波数で同一時間に複数の信号を空間多重送信する技術であるMIMOを発展させたMassive MIMOを実現することができる。 - エリクソン、5GやIoT向けデモなど70点以上を展示
エリクソンは「Mobile World Congress(MWC) 2017」で、5G(第5世代移動通信)やIoT(モノのインターネット)などを中心に、70点を超える展示を行った。その中の幾つかを紹介する。 - 5G実証実験で、28GHz帯のハンドオーバーに成功
5G(第5世代移動通信)の実証実験において、KDDIが28GHz帯を使ったハンドオーバーに成功した。端末を搭載した自動車で市街地や高速道路を走行し、複数の基地局間でシームレスに切り替えられたという。KDDIは、セコムと共同で5G実証実験を進めることも発表した。