Samsung、2020年に4nmのリスク生産を開始:「MBCFET」を製造
Samsung Electronicsは、ファウンドリー技術のロードマップを発表した。2020年に4nmプロセスを用いて、同社独自の「MBCFET(Multi Bridge Channel FET)」のリスク生産を開始する予定だという。
2020年に4nmのリスク生産を開始
Samsung Electronicsは2017年5月24日(米国時間)、ファウンドリー技術の開発ロードマップを更新した。それにより、第2世代のFD-SOI(完全空乏型シリコン・オン・インシュレーター)プラットフォーム、5nmまで縮小されたいくつかのバルクシリコンFinFETプロセス、4nmの“ポストFinFET”構造を持つプロセスの詳細が明らかになった。同社は、4nmプロセスを用いたリスク生産を2020年に始める計画だという。
Samsungは2017年5月、ファウンドリー事業を「Samsung Foundry」という別の事業ユニットに正式に分社化した。同社は、2018年にはEUV(極端紫外線)リソグラフィーを導入した7nmプロセスでの生産を開始すると発表している。
Samsungのファウンドリーマーケティング部門でシニアディレクターを務めるKelvin Low氏は水曜日の発表に先立ち行われたインタビューの中で、「当社はロードマップに関して極めて積極的な姿勢を取っている。今後3〜4年間の計画も積極的に発表していく方針だ」と述べた。
今回のロードマップは、Samsungが米国カリフォルニア州サンタクララで開催したファウンドリー技術関連の年次イベントで発表されたものだ。
次世代アーキテクチャ「MBCFET」
その中でも興味深いのは、同社が特許を所有する「MBCFET(Multi Bridge Channel FET)」と呼ばれる次世代のデバイスアーキテクチャだ。このアーキテクチャは、Samsungが特許を所有する独自のGAA(Gate All Around)FET技術であると説明されており、ナノシートデバイスを用いることで、FinFETアーキテクチャの物理的なスケーリングと性能の限界を克服したという。
Samsungのロードマップでは、2020年に4nmのLPP(Low Power Plus)プロセスを用いて、MBCFETのリスク生産に入る計画になっている。
今から2020年までの計画を具体的に述べると、Samsungは2017年に8nmのLPPプロセスを用いた生産を開始した後、2018年にはEUVリソグラフィを導入した7nmのLPPプロセス、2019年には5nmおよび6nmのLPPプロセスを用いた生産に入るという。
EUVリソグラフィは長年にわたり、193nm液浸リソグラフィの後継技術になると見込まれてきたものの、実用化がなかなか進まなかった。そのEUVリソグラフィがようやく導入されようとしている。SamsungのライバルであるTSMCとGLOBALFOUNDRIESはいずれも、EUVを用いた生産を2019年に開始する意向を明らかにしている。
Samsungはプロセス開発において、出力250WのEUV光源を用いた生産を目標としている。Low氏はEUVリソグラフィを導入したプロセスの生産性において鍵となる数値は「1日当たりウエハー1500枚の処理能力」だという。Samsungは既に1日1000枚の処理能力を達成しているが、1日1500枚も達成できる可能性が大きいとしている。
Low氏は「われわれは、EUVリソグラフィを導入した7nmプロセスを2018年に開始できると自信を持っている。これはもはや、単なる構想ではない」と述べた。
【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】
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