ニュース
高容量で長寿命、リチウム−硫黄二次電池用電極:硫化リチウムベース固溶体を採用(2/2 ページ)
大阪府立大学の辰巳砂昌弘教授らは、高容量と長寿命を兼ね備えたリチウム−硫黄二次電池用正極の開発に成功した。エネルギー密度の高い次世代蓄電池の開発が可能となる。
Li2S単体と比べて容量は2倍
さらに、伝導度の高いLi2S-LiCl、Li2S-LiBr、Li2S-LiI固溶体と固体電解質を組み合わせた正極を全固体電池に適用して、その充放電特性を測定した。この結果、Li2S-LiI固溶体の可逆容量が最も大きかった。Li2S単体と比べて容量は2倍を超えており、Li2Sの理論容量と同等の容量で動作することが分かった。
研究チームは、Li2Sベース固溶体と硫化物固体電解質を組み合わせた正極を用いて、充放電を長期繰り返す試験も行った。これまでのLi2S正極だと、1000〜1500サイクル後の容量は初期容量に比べて30〜60%も下がっていた。これに対し新たに開発した正極は、充放電を2000回繰り返しても容量の劣化は見受けられず、安定に動作することが分かった。
研究チームは今後、正極層の厚膜化や、軽量化に向けた固体電解質層の薄膜作製、高エネルギー密度の負極材料開発などを行っていく。これらを組み合わせることで、よりエネルギー密度が高い全固体リチウム−硫黄二次電池の早期実用化を目指す。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 名古屋大、カーボンナノベルトの合成に成功
名古屋大学は、カーボンナノチューブの筒状構造を持つ炭素分子「カーボンナノベルト」の合成に初めて成功した。 - タムロンが新しく狙うのは“人の眼を超える”技術
タムロンが2016年11月に発表したのは“人の目を超える”とうたう技術だ。「超高感度」と「広ダイナミックレンジ」を両立し、次の成長を担う一事業として展開を進めるという。 - 伸縮性導体、5倍に伸ばしても高い導電率を実現
東京大学の松久直司博士と染谷隆夫教授を中心とした研究チームは、長さを元の5倍に伸ばしても導電率が935S/cmという世界最高レベルを示す伸縮性導体の開発に成功した。 - 首都大学東京、導電性ポリマーの精密合成法開発
首都大学東京の野村琴広氏らは、優れた光機能を発現するπ共役ポリマーの精密な合成法を開発した。 - 脳波の状態から自動で作曲を行うAI、大阪大学など
大阪大学の沼尾正行氏らの研究チームは、楽曲に対する脳の反応に基づき自動で作曲を行う人工知能の開発に成功した。音楽で手軽に脳の活性化に結びつけることが期待される。 - 近接場結合を用いた3D集積、電力効率の1桁改善を
電力効率の改善なくして、性能改善なし。 慶応義塾大学の理工学部電子工学科で教授を務める黒田忠広氏は、講演内でこう語る。電力効率の改善には新しいトランジスタ構造などの導入が検討されているが、黒田氏が提案するのは「近接場結合」による3D集積技術である。