中国で勝ち残るコツ、“ジャストフィットな仕様”を追求する:製品分解で探るアジアの新トレンド(17)(3/4 ページ)
米国のプロセッサメーカーAmlogicは、中国のSTB(セットトップボックス)市場で首位の座を獲得し続けている。Amlogicが中国市場で勝ち残ってきた要因は、何だろうか。中国で発売されるSTBやAndroid TV boxを分解すると、その答えが見えてくる。
「S912」の中身
図3に、AmlogicのS912プロセッサのチップ内部構造を掲載する。64ビットのAndroid OSに対応した「ARM Cortex-A53」プロセッサが8基搭載され、4Kビデオ処理機能、3コアのGPUが搭載されている。STBやOTTに特化された特徴的な機能としてはイーサネットMAC(論理層)およびPHY(物理層)の機能が1チップに搭載されている点が挙げられるだろう。
通常、スマートフォンやタブレット、ウェアラブル機器に使われるプロセッサは、無線(Wi-FiやBluetooth)通信を前提としており、有線でのインタフェースはUSB、HDMIを搭載するだけになっている(ただしカメラモジュールとの接続のためにMIPIなどが搭載されているケースもある)。
Amlogicの製品ではイーサネット接続を前提として、イーサネット機能を入力とし、出力をHDMIやUSBとするOTT/STBに最適化した仕様になっている。汎用性の高いCPUを複数コア搭載し、Androidに対応し、インタフェースはTVなどのディスプレイに対応するのみ。通常のアプリケーション・プロセッサが持つ、カメラISP(Image Signal Processor)やセンサーハブ機能は有していない。
ARMコアを使用したCPU/GPUや、規格化されたインタフェースを並べて作っただけのチップではない。4KのデコーダーはAmlogic独自の「AVE-10」を用いている。AVEはAmlogic Video Engineの略だ。1995年の創業以来、常にビデオエンジンをメインに開発を進めてきた結果、生み出された機能である。AVE-10は、デコードに特化し、4K@60fps(フレーム/秒)を実現する。この仕様が中国のOTT/STB市場にマッチし、トップシェアを3年連続で達成した原動力になっている。2017年現在も、販売されている多くのSTBにAmlogicのチップが使われているので、4年連続でシェア1位を獲得する可能性は高いのではなかろうか。
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