5G基地局向け、ハロゲンフリーの多層基板材料:JPCA Show 2017
パナソニックは、「JPCA Show 2017」で、第5世代移動通信システム(5G)の小型基地局に搭載されるRFパワーアンプ用多層基板材料などを展示した。ハロゲンフリーで10層程度まで多層化できる基板材料だという。
低伝送損失と高熱伝導性も兼ね備える
パナソニックは、第47回 国際電子回路産業展「JPCA Show 2017」(2017年6月7〜9日、東京ビッグサイト)で、第5世代移動通信システム(5G)の小型基地局に搭載されるRFパワーアンプ用多層基板材料などを展示した。ハロゲンフリーで10層程度まで多層化できる基板材料を製品化するのは業界でも初めてという。
5Gシステムでは、スモールセルと呼ばれる小型基地局の需要が拡大するとみられている。基地局用のRFパワーアンプはこれまで、両面基板が主に用いられてきた。しかし、高密度実装の要求から、基板の多層化による省スペース化が不可欠となってきた。その上、高周波領域で高速通信を行うために、伝送損失が小さく放熱特性に優れた多層基板材料が求められている。
これまでは難燃性を維持するため、基板材料にハロゲンが用いられてきた。しかし最近は、環境負荷を低減する狙いからハロゲンフリーが必須となっている。ところが、代替となる非ハロゲン難燃性分は、高周波領域において伝送損失が大きくなるなど、ハロゲンフリーとするには課題もあった。
同社が新がたに開発した5G向けRFパワーアンプ用多層基板材料は、独自の樹脂設計技術によりこの課題を解決した。20GHzにおける伝送損失は−20dB/mである。この材料を用いると、20〜80GHz帯を利用した高速通信に対応できる10層程度の多層基板を実現することができる。ハロゲンフリーも達成した。
開発したハロゲンフリー多層基板材料は、熱伝導率も0.6W/m・kと高く、同社従来製品に比べて1.5倍となった。放熱特性に優れていることから、基地局装置を安定して稼働させることができる。
さらに、高温環境で長時間動作させても、RFパワーアンプ用基板の伝送特性は劣化が少ないという。125℃で1000時間稼働した場合に、比誘電率の変化率は1.0%、誘電正接の変化率は3.5%と、それぞれ低い数値に抑えることができたという。従来製品だと前者が3.0%、後者が80%になっていた。
開発した基板材料は2017年8月より量産を始める予定である。なお、この技術は「第13回 JPCA賞(アワード)」に選ばれた。
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