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集約進むタッチパネル市場、生き残りの鍵は2つディスプレイ総覧2017(2)(2/3 ページ)

市場の淘汰(とうた)が進みつつあるタッチパネル市場を取り上げる。タッチパネルの主力用途であるスマートフォン市場の成長が鈍化していく中で、タッチパネルメーカーが生き残って行くためのキーポイントを見ていく。

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生き残るための2つのカギ(1)自動車向け

 1つは、自動車向け。コネクテッドカー化の流れに加え、各種センサーの搭載により、車内外の情報を管理するモニターの必要性が高まる。当然、それら情報をコントロールするユーザーインタフェース(UI)も必要になる。そのUIの1つとして、タッチパネルの導入が検討され始めている。

 自動車のUIを考えた場合、音声入力、ジェスチャー入力という、運転の妨げにならない非接触入力型UIの導入が有力視されている。音声入力、ジェスチャー入力は、便利すぎるがゆえに、まだ技術的に不安を抱えている部分がある。安定した良い認識アルゴリズムが登場すれば一気に普及するとみられるが、まだまだ操作する全ての人の意図が正確に伝わるUIではない。

 タッチパネルは成熟した技術であり、的確に意図を入力できるデバイスになっている。供給量も申し分ないのだが、自動車メーカーは、モニターへの直接操作は運転上、危険であるとしてタッチパネルの採用を避けてきた。

 しかし、スマートフォンに慣れたユーザーからすれば、タッチパネルの付いていないモニターは不便に感じるまでに至りつつある。タッチパネル付きの車載モニターが一部で登場すると、タッチパネルなしのモニターは見劣りするという状況にあり、各自動車メーカーはタッチパネル搭載を進めていくと予想している。

 過去、カーナビゲーションシステムには、抵抗膜式のタッチパネルが搭載されてきた。抵抗膜式はある程度押し込まなければ入力できず、カバーガラスが要らず、技術的、価格的にも(静電容量式に比べ)かなり成熟しており、自動車に適した技術と思う。だがユーザーはスマートフォンの静電容量式に慣れ、“タッチパネル=静電容量方式”という図式ができており、車載分野でも静電容量方式が普及するとみている。

生き残るための2つのカギ(2)フレキシブル技術

 もう1つのカギは、タッチパネル形状を変化させる技術、フレキシブル技術になる。

 タッチパネルの用途であるスマートフォンなどの完成品自体が飽和していくと、目立ったイノベーションが起こらなくなり、完成品メーカー各社はデザイン性を競うようになる。そこで、タッチパネルにも、さまざまな形状に対応できるフレキシブル技術が求められるようになる。まずは、曲がった形状が求められ、最終的には曲げ伸ばし、折り曲げに対応する技術が求められていくだろう。

 自動車向けにも通じる話ではあるが、これまでのタッチパネルではそのまま対応できなくなる。フレキシブルに対応する材料や技術、自動車で求められる厳しい環境下での仕様に耐えうる材料や技術を使った新しいタッチパネルが必要になる。そこにタッチパネルでイノベーションを生む余地がある。そして、ここでイノベーションを起こしたタッチパネルメーカーは、付加価値で利益を得る、ないし、業界での存在感を高めるということに成功し、集約の進むタッチパネル市場でも生き残る確率を高めることができるだろう。

フレキシブル タッチパネルを求める市場

 最初の用途は、やはりスマートフォンになる。そして車載用途もフレキシブル技術を求めるだろう。車載モニターは大型化傾向にあり、内装と合わせるためにはある程度、緩やかにカーブさせたタッチパネルが必要になってくるだろう。

フレキシブル タッチパネルで必要となる新たな部材

 1つはカバー材料。フレキシブル、複雑形状になると従来のガラス材では加工しにくくなるので、プラスチック材の採用が増えるだろう。従来、プラスチックではなくガラスのカバー材が選ばれてきたのは、透過性が優れている点であったり、バリア性であったり、高級感、質感であったりという理由があった。今後、ガラスをプラスチックに置き換えていくには、なるべくガラスに近いプラスチックを開発する必要がある。ただ、ガラスに近づければ近づけるほど、加工性が悪くなるという課題を抱えており、このバランスをどううまく採るのかが重要になってくるはずだ。

 そしてガラス材も、もう少し曲げに強いものや、耐スクラッチ性に優れるもの、薄くて強度のあるものといった付加価値を持つ新しい材料を開発し、プラスチックに対抗することも予想される。

 もちろん、タッチセンサーもフレキシブル対応の技術が必要になる。

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