深層学習のコアライブラリー、ソニーが無償公開:プログラム開発をより効率的に
ソニーは、ディープラーニング(深層学習)のプログラムを生成するためのソフトウェアであるコアライブラリー「Neural Network Libraries」を無償で公開した。
Xperiaシリーズなどに搭載
ソニーは2017年6月、ディープラーニング(深層学習)のプログラムを生成するためのソフトウェアであるコアライブラリー「Neural Network Libraries」を無償で公開すると発表した。
ディープラーニングは、ニューラルネットワークを活用した機械学習の1つ。従来型の機械学習に比べて汎用性が高いという。このため、画像認識や音声認識に加え、機械翻訳やロボット制御など、その応用分野も広い。
ディープラーニングのプログラム開発では、人間の脳を模倣したニューラルネットワークを設計しなければならない。今回、ソニーがオープンソース化したコアライブラリーは、こうしたプログラム開発における一連の工程を、効率よく行うためのソフトウェア(演算モジュール群)である。
特長の1つは汎用的な実行環境であることだ。コアライブラリーのコアは、プログラミング言語「C++11」で記述されている。このため、LinuxやWindowsなどさまざまなOS、ハードウェアの環境で動作する。また、ディープラーニング開発で主流となっているプログラミング言語の「Python」を利用することができる。このため、開発者は少ないプログラミング量で直観的にニューラルネットワークの設計を行うことができるという。
動的なニューラルネットワークなど、最新のディープラーニング手法にも柔軟に対応できる。新たな機能の追加や拡張も容易で、そのために必要な関数ブロックや最適化モジュールを簡易に追加することができる。
コアライブラリーは、NVIDIA製GPUに対応しており、ニューラルネットワークの学習/実行を高速に行える。開発したプログラムの移植性にも優れ、スマートフォンやIoT機器向けに登場する新たなデバイスへの移植も容易だという。
スマートフォン「Xperia」シリーズに搭載したカメラアプリARエフェクトやLifelogアプリ、不動産価格推定エンジンなどはコアライブラリーをベースに開発した。今回のオープンソース化によって、他社の開発者も無償で利用することが可能となった。同社では利用者の拡大とプログラムのさらなる進化を目指す。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- ソニー、100km以上無線通信できるLPWAを開発
ソニーは、長距離や高速移動中でも安定して無線通信できるLPWA(Low Power Wide Area)ネットワーク技術を発表した。同社が発表した実験結果によると、障害物のないところでの100km以上の遠距離通信と、時速100kmの高速移動時における安定した通信が可能だという。 - ソニーがE Inkと電子ペーパー事業の新会社を設立
ソニー子会社のソニーセミコンダクタソリューションズと台湾のE Inkが、電子ペーパーディスプレイを活用した商品、その関連アプリケーションや連携プラットフォームの企画、開発、設計、製造、販売などを担う共同出資会社を設立することで合意した。 - ソニーが独自LPWAを展示、100km超の通信を実現
ソニーセミコンダクタソリューションズは、「Smart Sensing 2017」で、独自開発の低消費電力広域(LPWA:Low Power Wide Area)ネットワーク技術について紹介した。2017年4月に発表したもの。極めて遠い距離や高速移動中の車両からでも安定した無線通信が行える。こうしたいくつかの実験データを示した。 - ソニー、裏面照射で小型高精度ToFセンサー実現
ソニーは2017年6月5日、10μm角画素の裏面照射型Time of Flight(ToF)方式距離画像センサーを開発したと発表した。 - パナとNVIDIA、ディープラーニングで連携
パナソニック ソリューションテクノロジーは、「第6回 IoT/M2M展【春】」で、NVIDIA製AIスーパーコンピュータ「DGX-1」とGPU「Tesla P100」および、AIスーパーコンピュータを搭載した自動運転の事例などを紹介した。 - AIで複数の同時音声を分離、再現率は驚異の90%
三菱電機は研究成果披露会で、同社独自のAI技術「ディープクラスタリング」を用いた音声分離技術を発表した。この技術では、マイク1本で録音した複数話者の同時音声を分離し、きれいに再現できる。従来の技術では原音再現率が51%だったが、三菱電機の音声分離技術の場合90%以上となる。