富士電機、トレンチゲート構造のSiC-MOSFET:電気抵抗は半分以下に
富士電機は、トレンチゲート構造の「SiC-MOSFET」を開発した。プレーナーゲート構造を用いた素子に比べて、電気抵抗は5割以上も小さくなる。
オールSiCモジュールも2017年度中に製品化へ
富士電機は2017年7月、トレンチゲート構造の「SiC-MOSFET」を開発したと発表した。プレーナーゲート構造を用いた素子に比べて、電気抵抗は5割以上も小さくなる。
SiC(炭化ケイ素)パワー半導体は、現在主流となっているSi(シリコン)パワー半導体に比べて、電力損失が小さい。このため、搭載機器の省エネにつながると期待されている。同社は2013年10月より、松本工場(長野県松本市)内にSiCパワー半導体の生産ラインを立ち上げるなど、デバイスの開発、量産と応用機器への搭載にいち早く取り組んできた。
同社は今回、産業技術総合研究所との共同研究による成果を活用し、トレンチゲート構造を用いたSiC-MOSFETを開発した。この方式はウエハーに溝を掘り、垂直方向に電流経路を作る構造である。電流経路を水平方向に作るプレーナーゲート構造に比べて、セルの幅を短くすることができる。このため、同一の素子サイズで、多くのセルを搭載することができ、より多くの電流を流すことが可能となる。
トレンチゲート構造のトランジスタでは、電流をオン、オフするゲートの結晶面における電気抵抗をいかに下げるかが重要となる。今回は、独自技術を用いて信頼性を維持しつつ、しきい値電圧が5Vで3.5mΩcm2という電気抵抗を達成した。この数値は、プレーナーゲート構造の素子に比べて半分以下だという。
同社は、開発したトレンチゲート構造のSiC-MOSFET素子とSiC-SBD(ショットキーバリアダイオード)で構成するオールSiCモジュールについて、2017年度中をめどに製品化する予定である。このオールSiCモジュールを出力7.5kW、周波数20kHzのインバーターに搭載すると、SiベースのIGBTモジュールを用いた場合に比べて、電力損失を78%も削減することが可能になるという。
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