面記録密度が従来比20倍の磁気テープストレージ:ソニーとIBM研究所が共同開発
ソニーは、平方インチ当たり201Gビットの面記録密度を達成した磁気テープストレージ技術をIBMチューリッヒ研究所と共同で開発した。
ナノグレイン磁性膜の長尺化を可能に
ソニーは2017年8月2日、平方インチ当たり201Gビットの面記録密度を達成した磁気テープストレージ技術をIBMチューリッヒ研究所と共同で開発したと発表した。従来に比べて20倍の面記録密度となり、データカートリッジ1巻当たり約330Tバイト*)の大容量データを記録することができる。従来技術では、データカートリッジ1巻当たりの記録容量は15Tバイトだった。
*)IBM製TS1155テープドライブのJDカートリッジ収納の磁気テープよりもテープ全厚が薄く、同カートリッジ(109mm×125mm×24.5mm)1巻に対し、従来よりも6.4%長く収納可能であることを考慮した場合の容量。非圧縮容量。
テープストレージメディアの記録密度を高めるためには、磁気テープと磁気ヘッドの間隔を狭くする必要がある。ところが、そのまま狭くするとテープ表面と磁気ヘッドの接点で摩擦が大きくなりすぎるといった課題もあった。
そこでソニーは、テープ表面と磁気ヘッドの間に塗布する潤滑剤を新たに開発した。この潤滑剤は、テープ表面と磁気ヘッドの走行摩耗を抑えつつ、テープ磁性面と潤滑剤の接合を維持するための耐久性にも優れているという。
さらに、ナノグレイン(Nano grain)磁性膜の長尺化も可能とした。新たに開発したプロセス技術を用いると、磁性粒子(グレイン)の大きさが平均7nmというナノグレイン磁性膜を、ベースフィルム上にスパッタ法で形成することができる。この技術により、1kmを上回るテープ長のテープストレージカートリッジ装置にも対応することが可能だという。しかも、一般的な従来の成膜プロセスで課題となっていた、不純物ガスの発生も抑えることができた。
IBMチューリッヒ研究所は、記録/再生用ヘッドや最新のサーボ制御技術および、信号処理アルゴリズムなどを開発した。ソニーはこれらIBMの技術と自社の磁気テープ技術を組み合わせることで、テープストレージメディアとして業界最高レベルの面記録密度を達成した。
ソニーは今後、開発した技術を適用して大容量データ記録が可能な次世代テープストレージメディアの早期商品化を目指す。
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