米大統領、中国の取引慣行の調査を承認:SIAが即座に支持を表明(2/2 ページ)
米国のトランプ大統領が、中国の取引慣行に関する調査を承認する覚書を発表した。米半導体工業会(SIA)は、この発表に支持を表明している。
オバマ前大統領も懸念を表明していた
中国は、世界半導体市場における存在感をますます高め、中国政府が、国内の半導体産業を強化すべく、今後10年間で1610億米ドルを投じる計画を発表するなど、トランプ政権の発足前から、米中間の緊張を高める要素が生じている。
米国政府は近年、中国の事業体による米国半導体メーカーの買収活動に対し、あらがうあるいは阻止していく姿勢を示している。オバマ前大統領は、2017年1月に任期を終える直前に、中国が世界半導体市場の主要プレイヤーになるべく野心を持ち、米国半導体業界が脅威にさらされているとして、強い表現を使った報告書を発表した。
全米アジア研究所(NBR:National Bureau of Asian Research)は2013年に、IPの窃盗に関するレポートを発表し、「中国政府の政策により、米国のIPが窃盗される恐れがある」と結論付けている。同レポートの最新版によると、米国経済においてIPの窃盗が原因となって生じる年間コストは、約6000億米ドルに達し、米国経済に損害を与えるIP窃盗全体の50〜80%を中国が占める見込みだという。
Neuffer氏は、「IPは半導体業界にとって、必要不可欠な存在だ。半導体産業は、米国において4番目に大きい輸出分野であり、経済全体を支えている。米国の半導体メーカーは、最先端のイノベーションを維持すべく、売上高全体の約5分の1を研究開発に投じることにより、重要なIPを危険にさらすことなく海外市場で競争を繰り広げているのだ」と述べる。
またホワイトハウスは、別の声明を発表し、業界や防衛、外交政策など、さまざまな分野の18人の代表者たちが発表した覚書を称賛している。これらの代表者の中には、General DynamicsやLockheed Martin、Raytheon、Northrop Grummanなどといった防衛請負業者のCEOたちも含まれている。
「Congressional China Caucus(中国問題幹部会)」の創設者であり、かつて米下院議員を務めた経歴を持つJ. Randy Forbes氏は、「米国は、中国からIPに対する攻撃を受け、軍事的および経済的な競争力を脅かされている。これは、米国の国家安全保障に対する極めて深刻な脅威であるため、米国の国益に基づいた支援による、大胆かつ攻撃的な措置でしか反撃することはできない。この問題に関するトランプ大統領のリーダーシップに、称賛を送りたい」と述べている。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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