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新材料「二酸化ハフニウム」が強誘電体になる条件福田昭のストレージ通信(70) 強誘電体メモリの再発見(14)(1/2 ページ)

強誘電体の二酸化ハフニウムがを作製するには、添加物をドーピングする方法と、二酸化ジルコニウムとの混晶による方法の2種類がある。今回は、これらの方法において二酸化ハフニウムが強誘電体となる条件と、結晶構造との関係について解説する。

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3種類の結晶構造と3種類の誘電体

 前回は、強誘電体の新材料である二酸化ハフニウム(HfO2)系化合物が発見された経緯をご報告した。今回は、二酸化ハフニウムが強誘電体となる条件と、結晶構造との関係について解説する。

 前回でも述べたように、二酸化ハフニウム(HfO2)に強誘電性を備えさせる、あるいは、強誘電体の二酸化ハフニウム(HfO2)を作製するには、主に2つの方法があることが分かっている。

 1つは、二酸化ハフニウム(HfO2)に添加物をドーピングする方法である。強誘電性となる添加物元素の代表はシリコン(Si)だ。その他に、アルミニウム(Al)、ガドリニウム(Gd)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、ストロンチウム(Sr)などをドーピングすると、強誘電体を得られる。

 もう1つは、二酸化ジルコニウム(ZrO2)と二酸化ハフニウムの混晶である。二酸化ハフニウムジルコニウム結晶(HfxZr1-xO2)となる。なお、二酸化ハフニウムジルコニウム結晶は「HZO」と略記することがある。

 これら2つの手法に共通しているのは、二酸化ハフニウム(あるいはHZO)の結晶構造を3通りに変えられることだ。3通りの結晶構造とは、単斜晶(monoclinic crystal)、直方晶(orthorhombic crystal)、正方晶(tetragonal crystal)である。結晶構造と誘電体としての性質は密接に関連している。具体的には、単斜晶のときに常誘電体(高誘電体)となり、直方晶のときに強誘電体となり、正方晶のときには反強誘電体となる。

 添加物のドーピングでは、添加物がゼロ付近では単斜晶の常誘電体、添加物がごくわずかだと直方晶の強誘電体、添加物をさらに増やすと正方晶の反強誘電体へと変化する。

 二酸化ハフニウムと二酸化ジルコニウムの混晶(HZO)では、二酸化ハフニウム(ジルコニウムの割合がゼロ)のときは単斜晶の常誘電体であり、ジルコニウムの割合が増えると直方晶の強誘電体に変化する。ハフニウムとジルコニウムの割合が等しいときに、直方晶の比率が最大となり、強誘電体としての性質が最大化する。そしてジルコニウムがさらに増えると正方晶、すなわち反強誘電体へと変化していく。


二酸化ハフニウム化合物の結晶構造と誘電性の関係。上の3つのグラフは、結晶構造と電圧分極特性の関係を示したもの。下の矢印は、シリコンのドーピング、あるいは二酸化ジルコニウムとの混晶の度合いを示す。出典:NaMLabおよびドレスデン工科大学(クリックで拡大)

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