デンソーの新子会社とプロセッサを開発するThinCIとは:CEOに聞く(1/2 ページ)
デンソーが新設する子会社「エヌエスアイテクス(NSITEXE)」とプロセッサを共同開発するのが、米新興企業のThinCIだ。同社のCEO(最高経営責任者)を務めるDinakar Munagala氏に、同社の製品の強みなどを聞いた。
デンソーの新子会社とプロセッサを共同開発する新興企業
デンソーは2017年8月8日、自動運転システムに向けた新しいプロセッサを開発する子会社「エヌエスアイテクス(NSITEXE)」を設立すると発表した(関連記事:デンソー、自動運転の判断を担う新プロセッサ開発へ)。
エヌエスアイテクスでは、既存のCPUやGPUとはアーキテクチャが異なるプロセッサ「DFP(Data Flow Processor)」を開発するが、そのDFPを共同開発する相手が、米新興企業の「ThinCI」(シンクアイ、のように発音する)である。米国EE Timesは、ThinCIのCEO(最高経営責任者)であるDinakar Munagala氏にインタビューを行った。
EE Times EE Timesが前回インタビューを行ってからおよそ1年が経過した。ThinCIが現在取り組んでいるチップ開発について聞かせてほしい。
Mungala氏 現在はテープアウトのさなかであり、当社初のプロセッサは2017年第3四半期に発売される予定だ。当社のチップアーキテクチャは、自動車関連および自動車以外の分野の基準に沿ってテストを行ってきたが、いずれも良い結果を得られている。
EE Times 主要な顧客企業はどこか?
Mungala氏 自動車関連企業だが、社名を明かすことはできない。他の市場セグメントでも、厳選した数社の顧客を得ている。
EE Times その主要な顧客企業はデンソーではないか?デンソーは、新たに設立する子会社のエヌエスアイテクスを通じて、車載アプリケーション向けに最適化された半導体IP(Intellectual Property)コアのライセンスをSoC(System on Chip)メーカーに供与する計画を明らかにしている。
Mungala氏 デンソーは当社の出資者でありパートナーだ。当社がデンソーと共同で開発活動を進めているのは事実だが、それはThinCIが独自に行っているものとは異なる取り組みだ。私が先ほど言及したのは、当社だけの顧客のことである。
EE Times では、ThinCIはIPビジネスには参入しない方針ということか?
Mungala氏 当社はIPビジネスには参入していない。多くの新興企業はIPビジネスモデルを始めているが、それは自社製チップを販売できないからだ。当社の場合、そのケースには当てはまらない。
EE Times では、ThinCIの主力製品とは何になるのか。
Mungala氏 初期段階として、アクセラレータカードなど、当社製のチップを搭載したモジュールを販売することに注力している。NVIDIAがPCIベースのGPUカードをサーバやデータセンター市場に投入したように、当社もPCIアクセラレータカードを売り出す。こうしたモジュールとして使ってもらうことで、当社のプロセッサの効率の良さを分かっていただけると考えている。
EE Times それは、データセンター市場に参入するということか。
Mungala氏 当社のプロセッサはクラウドとエッジの両方に搭載できるが、当社が重点を置いているのはエッジコンピューティングだ。われわれのプロセッサは、クラウドでのデータ処理を高速化するためのコプロセッサとして用いることができる。だが、例えばISP(Image Signal Processor)など、データが生成される場所に、より近い位置に置く形で導入されるのが理想的だ。
EE Times つまり、ThinCIの技術とビジネスモデルは、チップからモジュール、深層学習(ディープラーニング)のトレーニングから推論に至るまで拡張可能であり、プロセッサの用途は自動車領域には限らない、ということか。
Mungala氏 その通りだ。われわれは、当社のプロセッサがセンサーからビジョン、カメラ、マイク、スマートリテール、セマンティックデータの分析まで、あらゆる領域の用途に対応できると考えている。
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