iPhone 8 Plusの心臓部「A11 Bionic」の中身:TechInsightsが分解
TechInsightsが、Appleの「iPhone 8 Plus」を分解し、搭載されたSoC(System on Chip)「A11 Bionic」の写真を公開した。
ダイサイズは30%縮小
Appleの「iPhone 8 Plus」に搭載されたSoC(System on Chip)の中身が明らかになった。アプリケーションプロセッサ「A11 Bionic(以下、A11)」は、A10に比べてダイサイズが30%縮小されている一方で、2基のCPUコアと機械学習ブロックが追加されているようだ。
TechInsightsは、SoCだけでなく、カメラとモデムチップの詳細も伝えている。なお、今回明らかになったのは一部の情報であり、SoCの分解は現在も進行中だという。
A11のダイサイズは89.23mm2で、前世代のSoC「A10」に比べて30%小さくなっている。TechInsightsの代表者がEE Timesに語ったところによると、上記画像にある「CPU1」ブロックの他、GPUとSDRAMがそれぞれ40%小さくなったという。
A11の「CPU2」ブロックは、A10の同じブロックよりも大きくなったが、その主な理由として、Appleがコアの数を4基に倍増したことが挙げられる。一方で、GPUが6コアブロックであることには変わりはない。各ブロックがチップ全体に占める領域の割合は、CPUが約15%、GPUは約20%、SDRAMインタフェースは約8%となっている。
TechInsightsは、チップに搭載された、いわゆるニューラルエンジンについては、まだ調査していない。また、「iPad Pro 10.5」に搭載された「A10X」と同様に、A11にもTSMCの10nmプロセスが採用されたと伝えられているが、TechInsightsはこの点についてもまだ確認していないようだ。
TSMCの「InFO」を採用か
A11はPoP(Package on Package)タイプのデバイスであり、A10と同様にTSMCのパッケージ技術「InFO」を採用したといわれている。TechInsightsによるiPhone 8 Plusの1回目の分解では、SoCにはMicron Technology製の「MT53D384M64D4NY」と刻印された3GバイトのLPDDR4 SDRAMが含まれていることが判明した。2回目の分解では、メモリチップはSamsung Electronics製であるらしいことがわかった。
iPhone 8 Plusには、iPhone 7に搭載された32.3mm2よりもわずかに大きい、32.8mm2のイメージセンサーが採用されている。このセンサーはソニー製で、1.22μmという画素ピッチを実現するものである。
TechInsightsは、「注目すべきは、ここ数年目にしていた、シリコン貫通電極(TSV:Through Silicon Via)に関連する痕跡が表面に見られなかったことだ。ダイの画像を表面的に観察する限り、裏面照射型チップに見えるが、われわれはそれが積層型チップ(ソニーの「Exmor RS(エクスモア アールエス)」であることを確認済みだ。つまり、iPhoneのカメラに初めてハイブリッドボンディングが採用されたということではないか」と述べた。
Appleは、iPhone 8 PlusにIntel製のLTEベースバンドプロセッサ「XMM7480」を採用した。
【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】
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